阿刀田高著「楽しい古事記」を読む。阿刀田の文献物の本は面白いのでほとんど読んでいるのだが、本屋にふらりと立ち寄ってみると新刊の古事記本が出ていたのでついつい買ってしまった。阿刀田自身は、どちらかといえば西洋ものの方が好みなのか、よく考えてみると日本のものは始めてのような気がしなくもない。そのせいもあるのか、この「楽しい古事記」、ひたすら楽しくない。
この本を読む前に安彦良和の古代史ものを読んでしまったからかもしれないが、阿刀田のこの本には古事記に対する思い入れがまったく感じられないのである。何かと学者の説を取り出したり、西欧の神話と比較したりとどうも古事記自体の話には熱が入らない。合間に入る旅行記もどれも「ちょっと寄った」程度のものらしき記述が目立つのも気になる。
阿刀田ほどのベテラン作家であっても、好きでもないものを書くと底がみえてしまうものなのね。



酒見賢一ピュタゴラスの旅」を読む。たまたま、古本屋で見つけたので買ってみたのだが、酒見賢一という人は、なかなかに優れた書き手のようで。もともと私はトリッキーな話が大好きなので、酒見の作風は非常に肌に合う。次は後宮小説を読んでみることにしよう。