建築業界と見積り

はぶ先生に本読むのがええよ、と指南を受けたのでさっそく池袋のジュンク堂で立ち読み(←買えよ)。

さすがにまったく門外漢の分野なので緊張しつつ棚を見てみたが、ほとんどがごりごりの実務系(建築方法とか材料の種類とか)かデザイン系の本で意外とプロジェクト管理系の本がない。うーむ、行く本屋を間違ったかな。

唯一住宅建築系とかリフォーム系とかの工務店の本の中に見積りの話などが書いてあったので、結局そこら辺を重点的に立ち読むことしてみた(←だから、買えよ)。

まず読んで笑ったのが、だいたいが「この業界はクレームの発生が常である」であるから始まるのである。どっかで聞いたような話ですね(w

「生き残る工務店になるには」といった感じのHow to本を読むと「値引きすることだけが営業ではない」とか「きちんと明細単位で金額を提示しつつ利益の範囲もお客に明示し原価の値引きは絶対にするな」とか書いてあるし、逆にこれから新築しようと考える人向けのHow to本には「相見積りをして安い方を選ぶような選び方をしてはいけない」とか「大手企業より中小の業者の方が費用を安く抑えられる場合がある」とか。

いやはや、参考になるというより同病相憐れむというべきだろうか。やはり請負の悩みはどの業界でも同じというわけですか。歴史も長く実績もある建築業界ですらこうなのだから、ソフトウェア業界で何を況や。結局、地道にリスクを減らしてゆくしかないのだろう。ある意味、請負の見積り問題を容易に解決するような手法は存在しないということが明確になったことが一番の収穫であろうか。

そういえば、自分で設計士などを探し自宅を新築した人の回顧録みたいな本があったのだが、これを読んでお客からSIerがどのように見られているかが痛いほど想像できる。よく「SIerは費用に見合うサービスを提供できていないから、お客から不信の目で見られるのだ」といった話をよく聞くのだが、おそらくそうではない。

お客は、提供者側に騙されて無駄なお金を支払っているのではないかという不安感を常に抱いており、疑心暗鬼になってしまうことが不信の最大の原因なのだ。SI業界にいる人ならば皆理解しているように、実際には大規模開発になるほど騙すどころか持ち出しで開発をしなければならない場合も多い。近年のシステム開発は特に予算も期間も縮まる傾向にあり、どの会社もハードウェアと運用・維持保守で稼がなくては割りに合わないという状況が続いている。そういう意味では決して騙しているわけではない。そう考えるとインフォームド・コンセントこそがシステム開発において重視されるポイントなのかもしれない。