クルーグマン先生どうしちゃったの?

結論はこうだ。もし短期金利がゼロになると、現金は短期債務の完全な代替物になる。そしてマネーサプライをいかに増やそうとも、債務もまったく同じだけ増加することで、すべての効果は打ち消される。まる。以上。



確かに中央銀行は別の政策もできる。たとえば長期債券やリスクのある資産を買ったりね。そしてこの対策は効果を持つ。でも、それは中央銀行が民間セクターのリスクを肩代わりしてあげることによるものだ。マネーサプライの増加とは本質的に一切無関係だ。

クルーグマンの結論 - I 慣性という名の惰性 I

裏切ったな!僕の気持ちを裏切ったな!(AA略

それはともかく。

現在のアメリカの状況を見れば、インフレ政策に悲観的になるのもわからなくはないが、日本での議論を踏まえれば永続的に実施することが困難な財政政策よりも景気回復局面まで永続的に実施可能なシニョリッジ政策しかないというのは明らかなように思える。

発言の内容自体は昔からの主張と何ら変わっているわけではなく、理解できなくはないが、そのことによってクルーグマンが何を言わんとしているのかがさっぱりよくわからんのだよなぁ。

[追記] id:koiti_yanoさんのクルーグマンは変節してない(昔からそう言っていた)というエントリも公開されたので、追記。

それはそうで昔からクルーグマンは財政政策にも積極的でそういう意味では変節ではないのは確か。でも、クルーグマンの状況認識としてなぜ今、インフレ期待やらシニョレッジではなく財政政策を中心に言及するのか、よくわからないところがある。FRBの政策が手詰まりに陥っているならともかく、国債の買取を大規模に行うなど出来ることはいくらでもある、まだまだ手仕舞いするには早すぎるように思う。

財政政策「も」やれではなく、財政政策「を」やれとクルーグマンが言う真意(というか勝ち目)がよくわからないのだ。

量的緩和やゼロ金利政策「今時点で必要ない」 須田日銀審議委員

日銀の須田美矢子審議委員は4日、京都市での講演後の会見で、量的緩和ゼロ金利政策の導入について「今時点で必要だとは全然思っていない」として否定的な見方を示した。

経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版

すげーよ、須田先生。GDPがマイナス10%台、株価はバブル後最安値を更新、政治は混迷、失業率は6.5%に達する見込みの中、「今時点で必要だとは全然思っていない」っていったいどんな状況だったら実施するつもりなんだろう。

あれか、関東大震災が起こって、ゴジラが東京を壊滅させて、株価が100円を割って、円が1ドル1円になったら実施するとかよほど厳しい要件が設定されているとか。まぁ、実際は銀行さえ健全ならばそれ以外が滅んでも日銀の知るところではないと言いたいのだろう。