経済

Work Rules! から何が学べるか

ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える作者: ラズロ・ボック,鬼澤 忍,矢羽野 薫出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2015/07/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見るGoogleが人事評価を統計的に処理して人事制度の刷新…

「経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策」を読む

経済問題は複雑だ。それは事実であり、認めざるを得ない。どのような経済現象や経済政策であっても、良い効果、悪い効果のどちらもが存在する。とは言っても、それぞれの効果の程度には違いがあり、1円を拾う程度の好影響と洪水に巻き込まれるような悪影響の…

消費税の逆進性について

unrepresentative agent の税の逆進性についての記事を受けて思っていたことをメモ(ただし、それほど興味はないので、強く反論したいわけではない)。 生涯消費に対して一定割合を課税するすることが「公平」であるというのは、他の条件が一定であるならば…

イノベーションを阻害する品質管理脳の恐怖!

などというあおり気味なタイトルを付けてみたのですが、皆様は新年度をどのようにお過ごしでしょうか。つい先程「ヤバい経営学」なる本を読み終わったのですが、ちょうど良いタイミングで中央大学竹内健先生のブログでこんな話を読んでしまったわけです。実…

骨太の一冊「リフレが日本経済を復活させる」を読む

「ここからだと、あの株価が蜃気楼の様に見える。そう思わないか」 「たとえ幻であろうと、あの街ではそれを現実として生きる人々がいる。それともあなたにはその人達も幻に見えるの?」 アベノミクスことリフレ政策の影響で円安・株高が続いておりますが、…

解雇規制緩和についての疑問

どうも日本の経済学者は解雇規制緩和が大好きなようなのだが、実のところそれほど根拠があるようにも見えない。きっと異論もあるだろうけれども、だいたいこんな感じの話なんじゃないの、と思ってることを書いてみようと思う。経済学者が解雇規制緩和を好意…

日本の『復活の日』

本サイトでは、長い間「インフレ目標2%」といったリフレ政策を通じての景気回復策を主張してきた。「良い円高・良いデフレ」を信仰する速水優総裁時代、「インフレ目標は魔法の杖ではない」と導入を否定しゼロ金利を解除した福井俊彦総裁時代、「デフレは金…

なぜグローバルな格差は生まれたのか

昨日に引き続き「不平等について―― 経済学と統計が語る26の話」より、興味深い話を抜粋。 世界が極めて不平等な場所であること、それも特殊なかたちで不平等であること、今日の不平等の大半は各国間の平均所得の格差に起因することを、これまで検討してきた…

「善玉」不平等と「悪玉」不平等

先日、「不平等について―― 経済学と統計が語る26の話」という書籍を読んだわけですが、この本ではグローバルな格差を中心として語られており、個人的感心とは微妙にずれていたというのが正直なところ。ただ、いくつか興味深い観点もあったので、紹介したいと…

問題は「格差」ではなく「貧困」(そして「非正規」ではなく「不景気」)

ドワンゴ取締役などを務める夏野剛氏の格差論騒動もあり、格差論争がまた熱く語られはじめました。(反論という形であっても)生活に苦しむ人々の声がトピックスとして上がってくる事自体はとても良いことだと思うのですが、どうも旧態依然な左派的な考えで…

今年の経済書ベスト3

今年は仕事が忙しくてほとんど読めてないんだけど、Amazon アソシエイトの足しにでもなるかなという不純な動機で書いてみる。 3位 イアン エアーズ著、山形浩生訳「ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣」 ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣…

生きものの記録

土居丈朗(慶應義塾大学経済学部教授) window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "https://platfo…

最低賃金を撤廃すべきでない理由

このブログでも以前言及したことがありますが、最低賃金規制は貧困対策としてはまるで役に立ちません。まず、働いている人にしか効果をもたらしませんし、最低賃金を高くしすぎれば失業増にも繋がります(ただし、現実の最低賃金水準ではそれほど大きな影響…

再分配目標というアイデア

このブログでも長年主張してきたインフレ目標による景気回復策であるが、自民党、みんなの党、維新の会、公明党が公式に政策として打ち出してきたこともあり、ようやく次の政権では実現しそうな見込みだ。批判的とは言え、朝日新聞にすら「リフレ論」なる文…

「業務系SEの末路的なお話でして」と一人当たりGDP

「業務系SEの末路的なお話でして」という資料が一部の人々(というかソフトウェア業界人に)の話題になっています。 業務系SEの末路的なお話でして from okachimachi この資料自体は業界人的には、現在置かれている絶望的状況を的確に記述しているように思う…

ベーシック・インカムについての個人的見解

Twitterでベーシック・インカムの話を書くと、どうにも批判を多く受ける。たしかにベーシック・インカムについて様々な意見を見ると、飯田泰之氏などが主張する月5万円という穏当なものから山森亮氏が主張する月15万円という理解し難いものもあり、単にベー…

債務問題の争点

債務問題、論点が多すぎることもあり、どうにも議論の争点が定まらない。ひとつには債務問題は「冷たい方程式」上にあり、バラ色の解決策が存在しない、ということがあるのだろう。「消費税を上げるべきだ」という主張が政策の争点になっていることもあり、…

分配問題についての個人的見解

最近、生活保護の問題が世間を騒がせており、特に片山さつきはキ○○イだと思うが、日本人の醜さを露呈させる結果になっている。さておき、一方の左な方々も小宮山厚労相の生活保護費削減ばかりに怒りをぶつけ過去、保護費の水準ばかりを問題にしてきたため保…

将来世代の負担を考える

日本の積み上がった財政赤字に対し、昨今、「財政赤字は将来世代の負担になるので増税の方が適切である」とする言説が主に日本の経済学者を中心にしばしば聞かれる。最近知ったのだが、この「将来世代の負担」という言葉には、概念の異なる二つの考え方があ…

レジーム転換したら復興財源にならないのか

himaginary氏の「日銀の国債引き受けに関する議論の超簡単なまとめ」という記事に昨今の議論のまとめが記載されている。私も「積極派」なのだが、一部異論があるので書いておこうと思う(積極派の多数が私と同じ意見をもっているかはわからないし、単に私が…

震災と復興から経済を考える

震災により日本経済が大きなダメージを受けて以降、経済学界隈では復興の財源についての激しい議論が行われている。人によっては、こんな時にそのような議論は不謹慎である、と感じるかもしれない。しかしながら、経済学者に道徳や具体的な災害対策、代替エ…

国民災害保険設立のお願い

東北地方太平洋沖地震により発生した東日本大震災は、現時点で死者・行方不明者2万人を超える大惨事を引き起こした。私自身は九州出身東京在住ということもあり、今回の震災で知己の人が巻き込まれることはなかったが、現地に検死に行かれた方のブログや生…

寄付優遇税制は実施すべきだろうか(条件付きでYes)

ここ10年ほどテレビからすっかり離れてしまったのだが、2009年に終了したTBSラジオ「ストリーム」の「コラムの花道」ポッドキャストをきっかけにラジオは良く聴くようになった。今は小島慶子 キラキラとDIGで一日の結構な時間が費している気がする(どちらも…

飯田泰之著「ゼロから学ぶ経済政策」を読む

「読む」と言っても実際に読んだのは昨年末のこと。書評を書こうと意気込んでみたもののずっと書けずにいた。その理由はなんと言っても名著すぎる!ことにある。これに並ぶ本は「クルーグマン教授の経済入門」くらいだろうか。クソゲーでもなんでもそうだが…

税とは何か

控え目に言っても税は経済学において鬼門だと思うのだが、基本的な考え方を整理しておいた方がよいだろうということで、メモがわりに書いてみる。まず税に対するイメージを解体する必要がある。税と聴くとどうしても権力により強制的に奪われるもの、という…

合理的期待仮説を合理的に理解する方法(草案)

道草に投稿されたスコット・サムナーの力作「わがロールモデル、ジョージ・ウォーレン」を読んでいた際、ふと「合理的期待仮説はこう解釈すれば辻褄が合う」ことに気付いた。現段階では、思いつきであるし、この解釈を取るならば本職の学者が書いたある種の…

経済学は何であって何でないか

人間は経済学の理論通りには動かないのだということは、経済学の世界では「それを言っちゃあおしまい」なところがあるようで、だから信用しないのである。 経済学不信 - 猫を償うに猫をもってせよ 経済学不信。多くの人がそうだろう。私もそうだった。工学系…

財政政策の効果に関する論文のアブストラクトだけ訳してみた

矢野先生が、「大不況(the Great Recession)とDSGEモデル」というエントリを書いておられる。ゼロ金利下だと高い財政乗数が得られるという話に多少興味があったので、アブストラクトだけ訳してみた(書くまでもなく私は英語が苦手なので品質は保証しない)…

非自発的失業とは何か

某所でたいへん頭のよろしい先生が大変頭の悪い発言をされていたのを読んだことを受け、本日は非自発的失業について書いてみようと思う。非自発的失業とは、経済学の標準的な失業分類のひとつであり、元々はケインズによるもののようだが、現在でも学部向け…

グレゴリー・クラーク著「10万年の世界経済史」を読む

産業革命以前、以後、そして、なぜ産業革命が起こったのかを計量経済史の視点から分析した本である。ジャレン・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」に連なる書物と言ってよい。最近どうもtwitterのせいで長文を書くのが面倒になっており、書くつもりではなかっ…