今、明かされる真実。
≪その壱≫ナポレオンは病死
≪その弐≫スプートニク2号の犬はすぐに死んでいた



先月の人工知能学会誌に面白い記事。現実の経済現象を統計物理学の発想と手法で実証的に解析する「経済物理学」の第一人者高安秀樹氏のインタビューの中で、こんな話が。

高安氏は価格のゆらぎが市場に本質的に内在していることを示すために、不完全性が排除された簡単な人工市場モデルを考えた。モデルにおけるディーラは、「安く買って高く売る」という行動を交互に繰り返すという非常に単純な戦略をとり、情報の観測には不完全性はない。ディーラが2人だけの場合は、戦略が決定論的なため、取引ごとに売り手と買い手が入れ替わり、市場は一定周期の振動を起こすだけである。しかしディーラが3人の場合は、この簡単な決定論的なシステムが予測できない複雑なゆらぎ(カオス)を見せる。マーケットもディーラも完全であるにもかかわらず、実際の価格変動と同様、フラクタル性を有する複雑なゆらぎを起こすのである。この結果から、高安氏は価格のゆらぎが情報の不完全性やマーケットの規制から発生するものではなく、もともと市場に内在されているものであるとの確信を得た。
カオスが非決定論的であるという書き方は、編者の勘違いだろうが、この結果はマルチゲームが本質的に「次の自分の手番の状況がどうなっているのかを予測する」ことが「人間にとって極めて難しい」ということを意味している。ようするにマルチゲームというのはパーティゲームであることが運命づけられているわけですな。