なんだか北朝鮮拉致事件も「拉致被害者五人を返すべきだ」なんて意見が出てきて、わけのわからないことになっているが、これってそんなに難しい問題なのかなあと私なんぞは思ってしまう。
そもそも、この事件自体、外交として行われているわけだから、プレイヤーは「日本政府」と「北朝鮮政府」以外にありえない。この時点で「拉致被害者家族の思い」とか「拉致被害者の思い」なんてのは、そもそも直接的には関係ないことがわかる。
で、ルールだが、まず外交はゼロサムではないと理解することが重要。貿易同様、取引の一種なんだから利益がないと思うならば、無理に外交交渉をまとめるべきではない。このことからわかることは、そもそも北朝鮮自体が核問題に関しては日本と交渉してもメリットはなさそうと考えている以上、核問題に関しては日本がどうこう言ったってしょうがなく諦めるしかないということである。結果的に日朝国交正常化はできなくなるが、相手側にやる気がないものはしょうがない。日朝国交正常化というカードはなくなったが、他にも食糧援助、朝銀救済、他国との交渉ルートの確保といったカードがあるわけで、それで何とかするしかないでしょう。
で、得点なんだが「北朝鮮」はどうだか知らないが、「日本政府」にとっては国益以外にはありえない。ただ、長期的に何が国益になるかなんてわかるわけはないのでここでは短期的に考え「国民の小泉政権に対する評価」であるとする。単純化すれば、「日朝交渉の評価」のアンケートを取り過半数の賛成が得られればよいということである(もしどんな手を打っても過半数が得られないならば、日朝交渉を始めてしまった小泉が馬鹿だったということになる)。で、現状の世論は「拉致被害者の全員帰国」が評価の決め手になっているわけだから、これを可能にするため出来るだけがんばるわけだ。と、考えれば「拉致被害者五人を返すべきか」という問題は以下の確率とリスクがどの程度かを考えればいいことになる。

率直に言って、この確率を求めることは難しい。しかし、ひとつ言える事は最後の選択肢となった場合、小泉政権は確実に退陣に追い込まれることは間違いなく、このような未来を選択することに対するリスクは非常に高い。小泉政権にとって、選択肢は「拉致被害者五人を返さない or 返す」しかなく、後者には高いリスクが存在する以上、結局のところ前者の選択肢しかないのである。QED.
どちらにしろ、国民世論は拉致被害者家族に同情的で彼らが小泉政権の現在の方針を支持している以上「拉致被害者五人を返す」という選択肢はありえないのだが。