澁澤龍彦著「妖人奇人館」を読む。大昔の雑誌に掲載されていた軽いエッセイをまとめたものらしいのだが、澁澤龍彦なので当然濃い話題ばかりで冒頭から「ロンドンの怪奇伝説」で書かれていた地獄の火クラブの話が始まる。ラスプーチンとかサン・ジェルマン伯爵とか有名どころの話ばかりではあるが、この手の話の道しるべとしてはよく出来ていると思う。
余談だが、MS-IMEで変換したら「要人貴人館」と出てきてちょっとニヤリ。
この手の話というのは、昔ムーの愛読者だったので結構詳しいのだが、良く考えてみるとムーから学んだことというのは結構多いような気がする。宗教に対して客観的に見ることができるのもムーのおかげだし(世にあれだけ多くの宗教があるという事実にさえ気付けば特定宗教の絶対性なんて信じられる理由はない)、そんじゃそこらのオカルトには騙されないという自信もムーによって培われたものだ。子供時代にムーという様々な形で現実というものをビビットに伝えるメディアに触れたことで、科学と非科学、理想と現実、抽象と具象という矛盾したものを自分の中にうまく共存できるようになったと私は思っている。
ムーという雑誌は実はすごく特殊らしく、出版社が教育専門の出版社である学研で編集者も他の部署から回されてきた普通の人ばかり。だから、ムーの誌面は歴史や雑学もうまく取り混ぜていたり、博識でないと決して知らないようなネタを披露してくれることも多い。読者からすればビリーバーばかりが作っていると思いがちだが、ビリーバーには面白い誌面なんて作れっこないもんね。だから、たまに「平城京から平安京の遷都は呪いをさけるためだった」とか教科書には出てこないけど割と本当な話が載っていたり、「最先端宇宙論『M理論』が説く神の正体!!」という特集では前半まるまる超ひも理論に至るまでの科学史が極めてまともに書かれていたりと驚くことも多い(たぶん、M理論の記事はサイエンスライターが書いていると思われる)。
無菌状態で育つと逆に病気にかかり易くなるのと同じで子供の頃には積極的に怪しげなものに触れてみるのもいいのじゃなかろうか。というわけで「0歳から始める資本論」なんてどうよ。