Yahoo! BBと契約することに相成りましたが、電話番号の申し込みが必要とのことで結局NTTの世話にもなることになり3週間ほどネットから断絶される予定。ASAHI-NETもプロバイダとしての契約は継続するのでWebページの移転はおこらないので、そこんとこよろしく。今は研究室から更新しているが、つくばの地とも今日でおさらばなので、三週間ほど更新はお休みします。まあ、どうせ入社そうそうはいろいろ忙しいだろうから更新してる暇もないだろうが。
ちなみに、私が入社する会社は孫主席率いるソフトバンクの関連会社である。で、ソフトバンクの悪口を言うなゴラァと一筆書かされてしまったこともあり、この日記でソフトバンク関連の話題には極力触れないことにするが、そもそも私はソフトバンクという会社は嫌いではない(まあ、だから入ったわけだが)。むしろ、あの強引さや身の軽さ、先見性を含め正しい「ビジネス」をしている会社だと感じている。今、2ちゃんねるがんばれ!!ゲイツ君Yahoo! BB問題で叩かれているのはもちろん知っているしその内容自体とても誉められた話ではない。しかし、表面に見えていることだけを見てYahoo! BBを批判するのは本質的な問題を完全に見落としていると私は思う。
Yahoo! BBが参入する以前のネット接続料はいくらだったか。なぜNTTはYahoo! BBよりも高い値段、低いサービスで顧客を獲得できるのか。Yahoo! BBが市場を破壊したというが、その前にはNTTが独占的な地位を利用して低価格でADSLに参入したのではなかったのか。なぜISDNなどという時代遅れの規格をNTTは先導し日本に普及させようとしたのか。なぜ日本では国際標準であるAnnex A.exの使用に文句がでるのか。これらのことを考えたことがあるだろうか。
日本では昔から国営企業の信頼度は抜群で、日本で最も大きな金融機関が郵便局であることはよく知られている。また、電電公社もNTTとして民営化以後もその知名度だけでなくデフォルトがNTTであるという特権を駆使し極めて有利にスタートしたし、NTTドコモの大躍進もNTTというブランドあってのことである。しかし、こうした状況が市場を大きく歪めてしまっているのは間違いない。
日本では、欧米では常識となっていたADSLの普及が非常に遅れた。これにより先進国であるはずの日本がインターネットでは後進国の地位に甘んじることになったわけであるが、このような状況を招いたのは誰かといえば100パーセントNTTである。NTTは昔から光が大好きである。当然、NTTとしては日本の通信はアナログ回線から一気に光ケーブルへの移行すべきであると考えていたのである。しかし、通信環境をすべて光にするには「ラストワンマイル」という大きな壁がある。ユーザの家やアパートにはアナログ回線は通っていても光ケーブルなど微塵も存在しない。電話局から電話局まではNTTの責任ですべて光にできる(実際にすでにほとんどが光ケーブルである)が、各家庭までのアナログ回線をすべて光ケーブルに変えるなどということがそう簡単にできるわけがない。そこで、NTTは家庭の直前まで光ケーブル、部屋までを銅線という中途半端なISDNという規格を経ることで通信インフラを徐々に変えていこうというシナリオを描いたのである。そして、実際にNTTはISDNの大規模な販売攻勢を図ったのである。
単純にこの話を聞くと「NTTは実は正しいことをしようとしてたのではないのか」と感じるかもしれない。実際、光になればADSLの十〜百倍のスピードは出て当然である。しかし、ここにコストという概念を加えると話は大きく変わる。現時点においても日本全国をすべて光ケーブルにするには国家予算並みの金額が必要と言われている。もはや国営企業ですらないNTTにそのような力があるはずもなく、いつまで経ってもコスト意識が国営企業的なままであったことを歴然と示している。
しかし、当然のようにこのシナリオはうまくいかない。ISDN普及途上のさなかに遙かに高速な通信を唱うケーブル局やADSL事業者が参入してきたからだ。IntelもRDRAMの導入で失敗したように、ニーズのない技術はどんなに優れていても普及はしない。実のところインターネットは仕組みからして一カ所でもボトルネックがあるとそれ以上の速度は出ない。現在でもサイトによっては1Mbps程度しか出ないことも多い。そのため、体感では100Mbpsも1.5Mbpsもそうたいした違いは出ないのである。ほとんどのユーザにとってADSLというのは必要十分な技術であり、月数万も出して光ケーブルを必要とする人などいなかったのである。NTTが今でも光への夢を抱いていることは社長の発言などからも伺えるが、この新たな敵に対処すべくNTTは競合他社を圧倒する低価格でADSL市場に参入したのである。結果は現状がすべてを表している。現在Yahoo! BBの加入率は急激に伸びているとはいえ、NTT東西合わせての加入率ではNTTが断トツトップ、NTT参入以前にあったADSL事業者のシェアは無きに等しい状況である。
しかも、NTTが中途半端に普及させたISDNADSLと干渉を起こし速度を低下させてしまうという問題がある。欧米では一般的に使われYahoo! BBが使っているAnnex A.exの使用に待ったがかかったのも、このISDNとの干渉問題が原因である(確かに、このような技術を導入する場合、既存技術との共存を最大限図るのが普通であるのでソフトバンク側の言い分は公の規格策定の場には似つかわしくないものであるのは間違いない。しかし、ソフトバンク側が一方的に責められるのは公平ではないだろう。NTTがISDNの売り込みを掛けていた時期にはすでに欧米ではADSLが普及しつつあったわけだから。また、あの場にいる全員が利害関係者だということも忘れてはいけない)。
また、私を含め技術者の人はNTTの研究者に対して尊敬の念を抱く傾向にある。実際、彼らの研究は最先端のものであるし世界に誇れるものだということは間違いない。しかし、このような最先端の研究へ出資される金がどこから出ているのかは考えておく必要がある。ソ連邦など社会主義国家では科学技術に関してだけは欧米に負けず劣らずの成果を残したが、これは単に資本主義国家においては国民に配分されるはずの利益が国家に集約され投資へと転化された結果である。NTTも同様研究開発部門の優秀さはその独占力によりより効率的に配分されるはずであった様々な消費者の利益を搾取することにより得られていることを忘れてはならない。
上記の記述に関しては偏った意見だとは私自身はまったく思っていないが、公平を期すために「私は以前ISDNユーザだった」しNTTが大嫌いであるということだけは記しておく。



天本英世氏が死去された。天本英世と言えば「死神博士」である。本人は、何十年も前にちょい役として出たつもりだったらしく死神博士について聞かれるのをひどく嫌っていたが、たとえそうであっても死神博士は役者天本英世の最大のはまり役であったと私は思う。天本英世は、その日本人ばなれした顔、話ぶり、知的さなど日本の泥臭い絵作りにははなはだ不釣り合いな役者であり、どのようなドラマや映画に出てもその違和感は常について回っていた。しかし、死神博士役の彼はそうではなかった。仮面ライダーという特撮のさらに敵幹部というファンタジーの中にあって天本英世という役者はその世界に完全にとけ込んでいた。本人の望むと望まざるとに関わらずこの特異な役者は、虚構で満たされた特撮という舞台の上において初めて真の実力が発揮されるのであろう、私はそう感じている。
天本英世という異才に謹んでご冥福を申し上げる次第。