ネットで文章を書いているといろいろ思うことがある。怒りに任せてやたらめったら文句を言ってもいいものだろうかとか、自分は正しいと思っていても間違ったことを書いてるのではないのかとか。まぁ、結論から言えば、ネットでの言論に規制があるわけでもなし、自分の思ったとおりに書けばいいのだ……と思い直す。というわけで、どうでもいいことを書き連ねてみることにする。



いちごびびえす経由で知ったのだが、スラッシュドットで「オフショア開発は雇用に影響しない?」というスレッドが立って、economic animal氏というリフレ派の技術者っぽい人とco2氏という元経済学部っぽい人が議論している。言っていることはおおむね、economic animal氏の方が正しい。個々の発言を見れば、co2の言い分は経済学的なバックグラウンドに基づいているものの、実際の経済事象への適用方法が適切でないようだ。例えば、以下の発言を見て行くと

>1.先進国においては、失業率は主に金融政策によって決定される
日本の公定歩合いくらですか? 完全に日銀の統制ができない。
未だに古典的な「流動性の罠」状態です。
流動性の罠状態にならなくとも不景気下では金融政策は極めて効きにくい。これは、経済学者にとってのコンセンサスのひとつである。これだけ見るとたしかにco2氏の方が正しいように思えるが、現在のリフレ派の議論を知っていればナンセンスなことは明らかである。効きにくくとも、効かないわけではないし、クルーグマンが言うように期待の力を借りれば、金融政策はやはり有効となる。バーナンキ背理法を知っていれば、この発言の馬鹿馬鹿しさがよくわかる。

>3.国際分業は参加国すべてのGDPを増加させる
帝国主義的搾取って言葉、国際経済学の教科書にないかい?
さすがに大っぴらではないがアフリカ、南米、一部のアジアは
悲惨そのものですよ。
帝国主義的搾取ってそれじゃマル経でしょうが。まぁ、そのような状況がないわけではないが、それは自由貿易化による不利益と自由貿易をしないことによる不利益の大きさを無視した発言だ。自由貿易による不利益は、どんなに多く見積もっても自由貿易による利益を上回らない。なぜなら、上回るのならその国は鎖国をしているはずだからだ(今の時代、鎖国をするぐらいはどこの国にだってできる)。帝国主義的搾取的な状況が「自由貿易のメリットが最大限生かされている場合」に比べて悲惨なだけで、自国内だけで成長を成し遂げるのに比べてどうかというと自由貿易した方がメリットが大きいのは、韓国と北朝鮮を見てれば一目瞭然。アフリカ、南米などの低成長国の問題は、そんな簡単なことが問題ではないことこそが問題なのだ。先進国の搾取が問題ならすぐに解決できるのにねぇ。

>4.変動為替相場のおかげで、全くとりえのない国も国際分業に参加できる。
その代わり、東南アジアと韓国はあっという間に為替ショック、金融危機(笑
為替ショックと金融危機は、固定相場によって起こったというのは経済学的常識(co2氏が経済学を習った時代にはそうではなかったのかもしれないが)。co2氏は為替ショックに見舞われた国が変動相場制だったとさかんに主張するが、タイやマレーシアなどの国は当時「ドルペッグ」という名の事実上の固定相場制をとっていた。だが、ドルとの釣りあいを取るため為替介入を続けた結果、維持しきれなく変動相場制に移行せざるを得なくなったというのが事実。そもそも、それらの国が変動相場制ならば釣りあいを取る必要もなく、自動的に為替が調整されるので為替ショックなんぞ起き様もない。これに関しては、あきらかな事実誤認なのでco2氏の主張に勝ち目はない。

ここ最近、なんで経済学を広めようとしているのが技術者ばかりで、経済学部卒の連中は何もしないのだろうと無性に腹が立っているのだが、スラッシュドットの件を見るに、むしろ経済学部卒こそが抵抗勢力になっているんじゃなかろうかとの思いがつのりさらに腹が立ってくる。まぁ、言っても詮無いことだが。*1

*1:ちなみに私はeconomic animal氏でもないしco2氏でもないしAC氏でもない。念のため。根が引きこもりなので、あんまり掲示板などに書くのは好きではないのだ。