大槻教授を果てしなく見直す

Googleで、経済物理学に関する評などを検索している時に大槻教授が書いたこんなエッセイを見つける。多少長いが、名言なのでそのまま引用させてもらう。

 決して物理学は数学ではない。必要に応じて数学は使うが、それも必要最低限の数学を使うだけである。そのことをよく表すのが大学の物理教科書の,「現代物理学」の章である。熱力学や電磁気学では,あらゆるところで数学のオンパレードだったのに,素粒子物理学原子核物理学などでは,数学などほとんど登場しないではないか。せいぜい1/2+(-3/2)などというたし算だけである。
 どんなに高度な数学を使おうと,物理学が高度になっているわけでは決してない。大切なものは何か。物理学と数学を,根本的に区別するものは何か。それは,使っている数学の変数が,物理学的次元(つまり物理量としての単位)を持つかどうかにかかっているのだ。

すばらしい。中村正三郎に煎じて飲ませてやりたい。

大槻氏はこれに続けて、経済物理学について次のように述べている。

最近,「経済物理学」という言葉をよく耳にするし,この種の学会もある。たとえば株価はランダムウォークの数学(統計)で議論できるという。しかし、株価は物理量としての次元を持っていないではないか。したがって,こんな物理学は,「…物理学」という名に値しないものなのだ。これはたんに,「統計力学の数学的手法を用いる数値経済学」とでもすべきものである。

経済学とて物理学と同じである。重要なのは経済現象にベキ級数が現れることではなく、どのような経済学の単位がどのような理屈によってべき級数的現象をもたらし、そして他の経済学の単位へ如何なる影響を与えるかなのである。その意味で大槻氏の指摘は極めて妥当なように思われる。