岩田規久男著「そもそも株式会社とは (ちくま新書)」を読む

有体に言ってしまうと岩規久版「会社は誰のものか」。会社っちゅうのは株主のものなんだよということを市場のもつ「交換の法則」「誘因の法則」「希少性の法則」の三つの原則に沿いながら懇切丁寧に教えてくれる良書。

世間に流布する基本的な誤解だけでなく、経営学者の伊丹敬之氏が説く「従業員主権型企業統治論」を徹底的に火あぶりにするなど見所も満載です。惜しむらくは実証研究の結果を引き合いに出しながらもデータの提示がほとんどないことだが、新書では仕方あるまいか。

本書を読んでいて思ったのは、そもそも「会社は誰のものか」という問いかけ自体がミスリードだったのではなかろうかという点である。例えば「公園は誰のものか」と問われたらどのように答えるだろうか。おそらく「子供たちのもの」「地域住民のもの」という回答はあっても「地方公共団体のもの」という回答はよほどひねくれてない限りでてこないだろう。

「○○は誰のものか」という文章には多義性があり、しかも第一義は「利用者」を問うているように感じられてしまう。しかし問うた本人が話題にしているのは「所有者」のことだったりするわけだから、混乱は必至である。最初から「会社は誰が所有しているか」と問えば、せいぜい出てくるのは株主か経営者であって従業員などという頓珍漢な話にはならなかったに違いあるまい。

そもそも株式会社とは (ちくま新書)

そもそも株式会社とは (ちくま新書)