お金で買えない価値は存在するか

金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか」を読んでて思ったのだが、やはりあるんだな。

まず、アーティストは同等の能力を保持する人に比べ30〜100%低い。しかし、これは機会費用という観点から考えれば30%〜100%の機会費用を払うことで芸術に従事することから効用を得たと考えることも可能である。

しかしながら、同書において挙げられている「アーティストは、芸術に従事するために最低限必要なお金が得られれば、それ以上の金額に興味を示さない」という事柄を踏まえると話は違ってくる。なぜなら、アーティストは機会費用の多寡に関係なく芸術を志向しているからである。

すなわち、アーティストにとって十分すぎるお金は芸術から得られる内的・外的な効用を得るために必要ないため、財・サービスを交換する権利たるお金はその価値を失することになる。

ただし、このことはミクロ経済学の基礎となっている効用の考え方を覆すものではない。単に財・サービスとの間の選好関係に関連性がなくなるだけである。