コーダーの収入低下を憂うこと

先日、経済産業省向けの仕事をしている知り合いと食事をしたのだが、彼によると経済産業省の今の悩みは、「IT産業の階層化の弊害によっておこる下流プログラマーの収入の低下」だそうである。「プライムベンダー」と呼ばれる「上流コンサルタント」たちがインドや中国にも仕事を発注できることを理由に、激しく値切り始めたために、今やわずか一人月30万円というケースもあるという。

こんな話を聞くと本当に悲しくなる。まず第一に「プログラムを書く」という仕事は簡単な仕事ではない。数学的な頭を持っていないとかなり辛いし、基礎がしっかりと出来ていないとろくなソフトウェアは作れない。物価の安いインドや中国なら許せるが、米国よりも生活費の高い日本で一人月30万円とはあまりにも低すぎる。

http://satoshi.blogs.com/life/2006/03/post_8.html

先日のbewaadさんのエントリと同種の話題ではありますが。

経済学の実証研究が明らかにするところは、国全体の生産性が上昇しても低技能な労働者の賃金は低下する一方、高度の技能を持つ労働者の賃金は大きく上昇しているという冷徹な事実です。もしプログラマを書くことが本当に高度な教育を受けている、あるいは日本人でなければできない職業であるなら決して賃金が下がることはないはずです。給料が安いというのは、それだけ「誰でもできる」あるいは「日本でなくともできる」仕事であることを意味しているはずです(だいたい、一人月30万円のプログラマならおそらく数学的基礎もないし、ろくなソフトウェアを作れないでしょうに。まともなプログラマを日本で雇おうと思ったら少なくとも人月単価80万以上はかかりますぜ)。

貿易による利益を最大限享受する一番の方法は、より安く・うまくなるのであれば他の国に任せることです。インド人にできることはインド人にまかせましょう。給料が安くて暮らせないのならば、プログラマになぞこだわらず、もっと日本人であることを生かせる商売に鞍替えすべきです(対面系のサービス業などはそういう面が間違いなくあります。インド人のセールスマンが取引を円滑に進めるなんてとても想像できません)。

プログラマの賃金を気にする暇があるなら、さっさと景気を回復させてより良い転職機会を増やしてくれよ>経産省のお役人様