市場原理主義という言葉を使う人への疑問

この件に関して、普段「市場原理主義」や「市場万能論」をベースに言説を展開している人に聞きたいんだけど、(故意か過失かにかかわらず)明示されていたルールを侵して本来支払われるべき経費(給与)を支払わなかった企業の名前が開示されないのは「市場の透明性」を阻害することにはならないのかな?

(中略)

市場原理とコンプライアンス尊重、あるいは社員の幸福が矛盾しないことを語る経営者の方々や、市場原理の導入によって僕らの生活が豊かになると主張する学者先生達こそ、必要な情報を隠匿し市場による淘汰を阻害する厚生労働省の対応を批判するべきだと思うんだけどね。

(中略)

あ、今は「家族だんらん法」だったっけか。原理原則を無視して表層だけで物事を押し進めようとする馬鹿の典型例だね、まったく。

「市場原理主義」あるいは「市場万能論」を唱える人へのちょっとした疑問 - 想像力はベッドルームと路上から

このエントリでの「問題ある行動をした企業名は公表すべきである」という考え自体には特に異論がないのだが、ここで批判されている「市場原理主義」者っておそらく経済学者のことなんじゃないかなぁ、と思ったので一応書いておく。

経済学者が「市場原理主義者」だというのは、はっきり言ってデマである。もし市場原理主義が正しいならアダム・スミス以後の経済学なんて必要ないわけですわな。ある意味、経済学というのは「市場の失敗」を研究する学問であると言い換えても良いように思う。労働市場などその最たるものではないか(もちろん、経済学者は市場原理主義が非常に優れた仕組みであるとした上で、必ずしもうまくいかない個別のケースに関し研究しているのだが)。

批判するのは別に構わないと思うが、あらぬ方向に批判の矢を向けてもしょうがない。おそらく多くの経済学者はホワイトカラー・エグゼンプションにも残業代の未払いにもあまり興味がないのではないだろうか。経済が全体として上手く行っていれば、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入してもうまくいく(実際、欧米では同様の制度体系を取っているが特に残業の増加は起こっていないらしい)し、経済が上手くいっていなければ総賃金が抑制されている以上、未払の賃金が多く発生するのも止むを得ない、ということかもしれない。

主張している内容はともかく、その矛先が間違っているのではないかと感じる次第。