システム開発プロジェクト成功に対する予備的考察

郵政民営化のようなめったにないビッグプロジェクトならば、高橋洋一のような天才の存在が成功の必要条件であったとしてなんら問題はないであろう。しかしながら、自社の業務をシステム化し効率化を進めたいと考えている企業は山のようにある以上、天才がいなければ成功が見込めないならばシステム開発のメリットを享受できる企業は一部に限られてしまうだろう。自動車がプロフェッショナルの道具でなくなったことにより多くの人がその効用を享受できるようなったように、天才の存在を必要としないシステム開発を可能にすることは非常に重要なことであり、SI屋がこれから実現しなければならいことである。

さて、この時Seasarのような高い生産性を生み出すプロダクトの存在はプロジェクトの成功に寄与するのだろうか。私はそうは思わない。ひが氏が取り上げるような成功プロジェクトが「優秀な人間の周りには優秀な人間が集まる」という格言の一例でないとは限らないし、成功プロジェクトの数をいくつ挙がったとしても、それは隠れた失敗プロジェクトの数を明らかにしてくれるわけではない。プロジェクトの成功が確率的に表現されるならば、どこかには成功プロジェクトは存在するのだから。

システム開発プロジェクトには、サービス業+製造業という側面がある。もし製造業の生産性が飛躍的に高まったとすれば、サービス業のウェイトは今以上に高まることになる。確かに今現在Seasarを導入すれば、その高い生産性によって先行者利益を得ることができるだろう。しかしながら、そのプロダクト並みの生産性が普通になった時、実際に起こるのは要件定義工程などサービス業的側面の拡大であり、むしろプロジェクトの成功確率は下がるかもしれない(ホストからオープン系への移行によって自由度が増し、要件定義工程が長期化する傾向があるという指摘はそれを示唆しているように見える)。

このような時、どのようにすればシステム開発プロジェクトの成功確率は上げられるのだろうか。私にはその鍵が、「数学で犯罪を解決する」にあるように思える。数学的、あるいは社会学的な科学的方法論を用いてプロジェクトを成功に導く要因を探したり、失敗する要因を明らかにすることで、よりプロジェクトの進行を安定的にすることが可能であるように思える。もちろん、絶対的な成功の法則はないかもしれない。しかしながら、神話の多いシステム開発の方法論の中から本当に意味のある方法論を抽出することでプロジェクト成功の確率はずいぶん上がるのではなかろうか。

数学で犯罪を解決する

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