本当にひどいのは日本の制度では?

新聞記事を見ますと、「募集退職」であるように見えたり、「競争力強化と社員の選択肢を広げることが目的だ」という会社広報(=人事)側のコメントなども見られますが、このサイトの「08-4Qリストラ」カテゴリの記事を通読されればおわかりいただける通り、ライン管理職が対象者を一人づつ個室に呼び出して退職勧奨する、実質的には「指名解雇」にきわめて近い内容で行われています。そこには人権尊重の考え方のかけらもありません。

http://www.jmiu-ibm.org/2008/11/209.html

私も同業他社にいるので他人事ではないが、このような脅迫に近い退職勧告が行われるのは、日本では社員の解雇が難しいというのが理由に他ならない。

企業にとっても社員は「人材」であり景気がよければ、解雇などという手段をとる必要はない。社員を解雇しなければならないのは、会社が極悪なのではなく、需要が減り人材を活用できる経済環境ではないからである。原因が外的要因である以上、会社には給料を下げるか解雇するかのどちらかの選択しかない。

それにも関わらず解雇も賃下げも困難な社会制度になっているが故に、このように精神的に追い詰める形での退職勧告が実施されてしまう。もし社会の雇用流動性が高ければ、解雇されることも「よくあること」となり、賃金水準を下げることで新たな職を得ることも容易になる。脅迫で精神的に追い詰められながら望まれない職場で働き続けるよりも、その方が双方にとってより良い結果なのは明らかである。

内容だけ見るとまるで日本IBMが悪いように見えてしまう。しかしながら、その背景には、日本の景気を回復できなかった、そして、雇用流動性を高める努力を怠り、正規雇用者にだけ手厚い制度を維持し続けてきた日本政府の無能さが露呈しているのである。