周波数オークション

欧米では帯域獲得のオークションが加熱しすぎて、携帯電話事業者が疲弊して3Gの立ち上がりが遅れたようです。ドイツでは6事業者の落札総額が5.8兆円になっています。イギリスでは5事業者の落札総額が約3兆7800億円です。

この辺も海外で3Gがスムーズに立ち上がらず、国内の携帯電話の海外進出を妨げる一因となったのではないかと思います。海外進出失敗は国内のプラットホームや端末の問題ばかりが注目されますが、こういう事情もあるのではないかと。

こういう事情が無く、海外でスムーズに3Gが立ち上がっていたら、別の未来もあったのかもしれません。海外事情がよくわからないと失敗した原因はとらえ難いのではないかと思います。

民主党マニフェストに含まれる電波オークション制度 | スラド

なんだかネガティブなコメントばかりで驚いた。経済学者的には、周波数オークションはすばらしい成功例という話で終わることが多いのだが、やはり経済学的に正しいことは世間的には間違っているとみなされるものなのであろうか。

確かに一回目はひどい結果に終わる可能性があるが、何度か繰り返せば落ち着くところに落ち着くのが市場という奴であり、すくなくとも現在のような既得権益だけで放送権が扱われる状況よりはましだと個人的には認識している。だって、放送権を欲しい会社が価値があるという金額で落札する一方、国としても権利を売ることで税収になるわけだから、両者にとって良い話だもの。

もちろん、オークション方式によっては、値段が適正な価格以上につりあがることがあるので、セカンド・プライス・オークション方式にした方がよいなど制限は付くが。

少なくとも、オークションを3Gの立ち上がりの失敗原因として責めるのであれば、NTTの既得権が守られていた日本においてADSLの導入が遅れたりしたこともやはり失敗なのであって、重要なのはよりよい仕組みを作ることに違いなく、それはおそらく現状よりもオークション方式により近いであろうことは間違いない。

……と、書きつつもシステム開発案件をオークション方式で入札した案件が大失敗したという話を知っているので、一抹の不安があるのも確か。行動経済学が示唆するように投資の結果が出るのがある程度先の話になる場合、バイアスがかかってしまう可能性もある。でもまぁ、それこそその手の問題は経済学者の十八番なので解決策だってもうある気もするしなぁ。