馬鹿げた話

日本が自力でできる景気回復策はもはやリフレ政策しか残されておらず、さらにリフレ政策がやはり有効であったことは2003年にはわかっていたわけで、何を今更議論することがあるのか、と言うのが個人的感想。

構造改革不良債権処理も大規模な財政政策もやったでしょ? それに、2003年の非不胎化介入で景気も上向いたでしょ? 10年以上も不景気放置しといて、潜在成長率が問題だ、雇用が問題だって、そりゃ不景気放置したんだから、そうなるのは当然だよね。

構造改革で景気回復なんて、経済学を根底からひっくり返さない限り成立しない。だって、供給制約があるなら失業や不稼動の工場なんてありえないでしょ。不良債権処理も景気回復とともに雲散霧消。財政政策は小渕政権下でさんざんやったので実証研究の結果は出ているが、ほとんど乗数はなかったというのが結論。

それに対して、福井総裁時代の大規模な介入は、始めた途端に株価が上がり始めたし、景気も回復に向かった。インフレ率も-1%〜-1.5%の状態から0%付近まで戻った。当時、私は新卒で、株価はどんどん上がっていくのに、金がなくてほとんど買えずくやしい思いをしたから良く覚えている(w

日本が長期低迷してる根源が、日銀というたったひとつの、そしてあまり有名ではない組織が原因で起こっている。経済学に詳しくない人が聞けば、そんな馬鹿なと思うかもしれない。起こっている問題の深刻さに比べ、なんたるちっぽけな原因であることか。

しかし、例えば日本では明治期まで脚気は国家的な問題となるほど重要な問題だった。今ではよく知られているように、脚気の原因はビタミンの欠乏という非常にしようもないものである。しかしながら、日本の脚気史などを読むと、

他方、外国など各所の脚気流行について現地調査をし、食物との関係も調査していた。とくに東南アジアでの脚気研究は、「脚気は未知栄養物質の欠乏による欠乏性疾患」と結論される段階にまで進んでいた。しかし国内では、依然として伝染病説と中毒説の勢いがつよく、「未知栄養欠乏説」はなかなか受けいれられず、脚気の原因説をめぐる混乱と葛藤がつづいた。

など書かれており、原因が特定されるのにかなりの時間を要しただけでなく、それを受け入れるのにも時間がかかったようだ。

ある意味、日本の不景気と良く似ている。被害があまりにも甚大すぎるが故に、おそらく原因も非常に大きく解決も困難なものに違いないという思い込みがあり、それが故に日銀というちっぽけな組織が原因であることに納得しがたいのかもしれない。

しかし、アメリカではグリーンスパンバーナンキが経済の顔となっていることからわかるように、中央銀行が経済のかなり大きい役割を占めていることは明らかである。日銀が日陰の存在でいることこそがむしろ異常と言っていい。

それにしても、日本は本当に時間を無駄にした。少なくとも2003年以降の6年間は本当に無駄だった。単に国民も政府も疲弊しただけだった。私はいい加減終わりにしてほしいと思うが、ここ最近ぶり返した議論を読む限り、少なくともあと5年はこの状況が続くと考えた方がよいのだろうか。

大変馬鹿げた話だが、これが日本の現状ということだ。