根井雅弘著「物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ (中公新書)」を読む
経済学の歴史 (講談社学術文庫)は面白かったなと。これだから経済学者は信用できない(w
言いたいことはわからんでもないが、やはり思想にどっぷりはいただけない。
経済学において多様な意見があるのは、途中経過としては認められても結論として認められるんじゃないんでないかい? 思想や発想が科学理論の成立において重要な役どころを演じることは多々あるだろうが、科学理論自体は思想ではない。ある現象を説明するのが科学だ。試行錯誤や問題の難しさはあっても、結論は必ずある。
「経済学の考え方は『多様』であり、ある一つの思想に基づいた政策で経済問題がたちどころに解決されるというようなマジックは決して存在しないからである」などという発言は、もはや学者として終わっているとしか言いようがない。もちろん、いまだ銀の弾丸が見つかっていない様々な問題は多く残されているだろうが、だからといって解決する可能性の高い問題までまとめて一蹴するなど愚の骨頂ではないか。
現代の経済学が意見が集約される一方、行動経済学、実験経済学、幸福といった新しい視点が花開いている状況は十分健全であり、批判に足りえないと私には感じられる。
以下、蛇足。
本書の中で一点気になったのだが、シュンペーターに関してこのようなことが書かれている。
吉川氏のように、「新しい財・サービスは何よりも『需要制約』を取り除くことにより、経済成長を生み出すものである」というふうに論を進めていけば、もっと生産的な議論ができたのではないだろうか。
このような議論が本当に生産的なのだろうか。新しい財が欲しくなったとしても、その財を買った分だけ他の財の購入を減らすと考えるのが普通ではなかろうか。通常、人間は自分の資産以上の何か(例えば家とか宝石とか)を欲しているのだから、新しい財など出なくても買うことができるのであれば、すでに購入しているのではないだろうか。
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なぜ、経済学は批判されるのか
思いついたので、適当に書いておく。
経済学が人気のない理由のひとつは、経済学という学問が基本的に認識のない多数の人々の利益ために認識のある特定の人々に不利益をもたらすことが多いからではないかと思わんでもない。理論だけで言えば、パレート改善をうたっているが、実際には規制緩和、市場開放、日銀批判(w と既得権益の排除という形で実行に移される。利益を受ける人は、自分が利益を受けたとは思わないが、そうでない人にとっては不満たらたらであろう。
もうひとつ思ったのは、それは経済学者にとっての経済と人々が経済学者に期待していることにズレがあるのではないか、ということである。物理学でもよくあることだが、人々が日々感じている素朴な疑問に学者が答えられないとか、あるいは学者は答えているつもりになっているが質問者が欲しかった内容とは違うとか。
例えば、こんなの。
- Q. なぜアニメーターはこんなに給料が安いんですか?
- A. 生産性が低いからです。