読書

骨太の一冊「リフレが日本経済を復活させる」を読む

「ここからだと、あの株価が蜃気楼の様に見える。そう思わないか」 「たとえ幻であろうと、あの街ではそれを現実として生きる人々がいる。それともあなたにはその人達も幻に見えるの?」 アベノミクスことリフレ政策の影響で円安・株高が続いておりますが、…

なぜグローバルな格差は生まれたのか

昨日に引き続き「不平等について―― 経済学と統計が語る26の話」より、興味深い話を抜粋。 世界が極めて不平等な場所であること、それも特殊なかたちで不平等であること、今日の不平等の大半は各国間の平均所得の格差に起因することを、これまで検討してきた…

「善玉」不平等と「悪玉」不平等

先日、「不平等について―― 経済学と統計が語る26の話」という書籍を読んだわけですが、この本ではグローバルな格差を中心として語られており、個人的感心とは微妙にずれていたというのが正直なところ。ただ、いくつか興味深い観点もあったので、紹介したいと…

今年の経済書ベスト3

今年は仕事が忙しくてほとんど読めてないんだけど、Amazon アソシエイトの足しにでもなるかなという不純な動機で書いてみる。 3位 イアン エアーズ著、山形浩生訳「ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣」 ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣…

飯田泰之著「ゼロから学ぶ経済政策」を読む

「読む」と言っても実際に読んだのは昨年末のこと。書評を書こうと意気込んでみたもののずっと書けずにいた。その理由はなんと言っても名著すぎる!ことにある。これに並ぶ本は「クルーグマン教授の経済入門」くらいだろうか。クソゲーでもなんでもそうだが…

マイケル・サンデル著「これから『正義』の話をしよう」を読む

NHKで放映されていた「ハーバード白熱教室」の内容を元に書き起こされた政治哲学の解説書である。私も「ハーバード白熱教室」を見ていたが、なぜ今までこのような内容が放置されていたのか理解出来ないくらい面白く興味深い内容だった。私自身はここ十年くら…

グレゴリー・クラーク著「10万年の世界経済史」を読む

産業革命以前、以後、そして、なぜ産業革命が起こったのかを計量経済史の視点から分析した本である。ジャレン・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」に連なる書物と言ってよい。最近どうもtwitterのせいで長文を書くのが面倒になっており、書くつもりではなかっ…

飯田泰之著「経済は損得で理解しろ!」を読む

飯田先生の本なので安心して読める。入門書にも関わらず、外部性に関する理解の怪しいところが補間できたりと新たな発見を得られるところはさすがである。まぁ、かなり高い事前期待を持っていたので、それは下回ってしまったなぁ、というのが正直なところ。…

鈴木謙介著「サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)」を読む

先日読んだ「“反転”するグローバリゼーション」は、専門書っぽい雰囲気もあったのでそれがよくなかったのかもしれぬ、と思いなおし「サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)」を読んでみた。グローバリゼーション本とは異…

鈴木謙介著「“反転”するグローバリゼーション」を読む

チャーリーこと鈴木謙介氏のLIFEでの姿しか知らないことに気付き、いったいどういう考えを持っている人なのか一回くらい著書を読んでみようと買ってきた。結論から言うと、私にとって社会学は生理的に受け付けない、ということがわかった(おい)社会学の本は…

グインサーガ129巻「運命の子」を読む

とうとう、完成しているものとしては最期となる129巻になってしまった。死ぬ間際に書いたのだから、もっと悲壮感あふれる文章になっているかと思いきや、いつも通りのグイン・サーガでとても辞世の作とは思えない。(以下、ネタばれあり。要注意)まぁ、やっ…

吉田伸夫著「光の場、電子の海―量子場理論への道 (新潮選書)」を読む

世の中には、不確定性原理やシュレディンガーの猫といった話題を取り上げて、量子力学の不思議さを吹聴する書物が少なくないが、量子場の理論を学ぶと、そうした軽薄な騒ぎに巻き込まれることが恥ずかしくなるだろう。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんな…

飯田泰之著「脱貧困の経済学」を読む

カリスマ経済学者(w 飯田先生の新著。あの小飼弾ですら絶賛した内容だけに、一般の書籍では得られない話が満載の必読の書である。年収が1000万円以下の人は払った税額より国から提供されるサービスの額の方が多い、とか、日本では再分配してもほとんど不平等…

「遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)」を読む

死してもなお本が出続けるところが、栗本らしいというか何というか。帯を含め栗本薫追悼という言葉がどこにもないのだが、まだ続巻が出るからなんだろうなぁ。しかし、ミロク教団編が予想外に面白いので困ってしまう。栗本が生きていたうちに決着がついてい…

HARD FACTS 事実に基づいた経営

読んでから半月ほど経ったのだが、あまりにも名著すぎて頭を整理しているうちに時間が経ってしまった。この本はいわゆるビジネス書である。私の場合、長らく経済学に傾注してきたこともあり、ビジネス書にはまったく関心を払ってこなかった。いくつか名著と…

歴史が解釈であるならば

東郷和彦著「歴史と外交─靖国・アジア・東京裁判 (講談社現代新書)」という本を読む。通常であればこの手の本は(苦手なので)スルーするのだが、佐藤優氏の「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」の中で高い評価をされていた人の書物だったので、珍し…

経済成長理論入門:経済学を納得させる優れた入門書

日本人の経済学への不信感には根強いものがある。その裏には歴史的なもの、制度的なもの様々な要因があるのだろうが、個々人に限れば「経済に関して見聞きした知識から納得感が得られない」ということこそが不信感の元になっていることは疑いようがない。た…

安岡孝一、安岡素子著「キーボード配列QWERTYの謎」を読む

以前、著者からはQWERTY配列の件について指摘を頂いた件が本になっていたので買ってみた。いやはや、ものすごい労作です。感想としては、 レイサム(´・ω・)カワイソス 注釈に度々出てくる、「どこそこの誰それが○○したという説があるが、そんな人はいない」とい…

乾くるみ著「イニシエーション・ラブ (文春文庫)」を読む

一見して恋愛小説。一読しても普通の恋愛小説。しかして、その実態は……?もし、著者名が乾くるみでなければ決して手に取ることはなかったであろう。だが、あとがきのヒントをもらいながら、二度目を読み始めたときの驚きはこれぞ乾くるみというものであった…

「戦争のリアル」を読む

押井守と岡部いさくの対談集。ただ、発言の9割が前者というあたりが押井監督らしい(編集したらそうなったわけではなく、本当にそれだけしゃべったのであろう)。軍事オタクな方々と違って私は世の中から戦争をなくすのはそれほど難しいことではない*1と思っ…

飯田泰之著「歴史が教えるマネーの理論」を読む

これは掛け値なしに良い本。おそらく過去にこのような観点から書かれた「お金」の本はなかったであろう。コンパクトにまとまっているし理論の発展が順序だてて説明されているので非常に頭に入っていきやすい。グレシャムの法則が誤用されているという指摘も…

支倉凍砂著「狼と香辛料(5)」を読む

とうとう5巻目よりも、帯の「TVアニメ化決定」に驚く。キャラクター小説としては決して良くできてるとは言えないし、アニメには向かない作品だと思うのだが……。本編は本編でとうとう商人小説ではなくなってしまった挙句、ツンデレどころかデレデレ小説になっ…

浜井浩一著「刑務所の風景―社会を見つめる刑務所モノグラフ」を読む

某所で紹介されていたので北海道旅行での暇つぶしに持っていって読んだのだけれど、非常に面白い本で刑罰のあり方について興味を持っておられる方は必読である。筆者は犯罪学の研究を主業務としている元法務官僚(現職は龍谷大学教授)で、その中で法務心理…

岡嶋二人著「そして扉が閉ざされた (講談社文庫)」を読む

最近読んだ99%の誘拐に引き続きで読んでみた。理由不明のまま、核シェルターに閉じ込められた四人の男女……と聞くと全然違う話が始まってしまいそうな気もするのだが、この状況で推理合戦が始まってしまうあたりミステリーという枠の限界を感じてしまう。ネタ…

遠藤周作著「海と毒薬」を読む

面白いが、本当に面白いのは最初の出だしの部分であって、本編たる人体実験部分ではない気がしてしまうのはこの小説をホラーとして読もうとしている自分がいるからなんだろうな。話が中途半端に終わってしまうあたりも文学らしいところではあるが、やはり物…

岡嶋二人著「99%の誘拐 (講談社文庫)」を読む

この文庫がすごい!の2005年度1位だった作品らしい。某書と違ってこっちは面白かった。あとがきに、 もちろん本作へ寄せられたのは、そんな絶賛の声ばかりではなかった。「こんなこと、物理的にあり得ない」とか「デバッグもなしの一発勝負でプログラムが完…

志水辰夫著「行きずりの街 (新潮文庫)」を読む

1991年度のこのミス1位という帯に引かれて読んでみた。うーむ、つまらん。いや、つまらんは失礼だな。言い直そう。面白くない。文章は今まで読んだ作家の中では下手なレベル。読んでいて状況が把握できなくなることもしばしば。しかし、何より問題なのはキャ…

グインサーガ外伝21巻「鏡の国の戦士」を読む

とうとうグインに男児が生まれますた(wただし詳細は不明。タイガーマスクみたいな奴だったらどうしよう。鏡の国の戦士―グイン・サーガ外伝〈21〉 (ハヤカワ文庫JA)作者: 栗本薫出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/07/01メディア: 文庫 クリック: 6回この…

宮部みゆき著「名もなき毒」を読む

誰が悪いわけでもないのに心を犯す「毒」の物語。面白いだけでなく、非常に考えさせられる作品。おすすめ。自己実現というのは衣食住が足りてしまった現代におけるある種の病なのかもしれないなぁ……と思う一方でカーネギー本でも「誰から見ても明らかな犯罪…

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を読み始める

Book Offにて1200円で購入。どうみても新古本。一巻を読んだ頃はNeetの脳内世界話という印象だったけど、巻が進むにつれてだんだんと鬱になる展開になってきたなぁ。ある意味、ドラマや少女漫画に連綿と流れる伝統のフォーマットではあるけれど。