飯田泰之著「脱貧困の経済学」を読む

カリスマ経済学者(w 飯田先生の新著。あの小飼弾ですら絶賛した内容だけに、一般の書籍では得られない話が満載の必読の書である。

年収が1000万円以下の人は払った税額より国から提供されるサービスの額の方が多い、とか、日本では再分配してもほとんど不平等度に変化がなく、若者などではむしろ悪化する、とか、一人当たりのGDPでみると日本は先進国の中では下位1/3に属する、など、普通の人だけでなく経済学者でも認識していない人が多いのではないか。

しかし、一方でこの本を読み非常に悲しくなってしまった。この15年間の政治や国民の無能ぶりを鑑みるに、同書で挙げられた政策の大半は実現せず、むしろ「セーフティネット」という言葉だけがひとり歩きし、最低賃金の引き上げや日雇い労働の禁止など、むしろ貧困率を上げる政策が取られるという予想が一番考えられそうだからだ。

すでにここまでひどい状況になっており、政策が実施されてから効果が表れるまで半年〜1年半はかかるのに、当面同書に述べられるような政策が実施される可能性は薄い。現在の予想だと、民主党が300議席を越える勢いとのことなので、経済的には絶望的と言ってよいだろう(馬淵澄夫には期待したいところだが)。

失われた10年は、もはや失われた日本になりつつある。

脱貧困の経済学-日本はまだ変えられる

脱貧困の経済学-日本はまだ変えられる

民主党政権で唯一期待できること

民主党政権になれば、(今のところ)記者クラブ制度が解体する予定である。この点だけは、評価できる。既得権益の問題は、単に権力が集中したり特定の人が得をするということだけでなく、その業界がだんだんダメになっていくことにある。

日銀に対するスタンスもそうだが、日本のマスコミの政治や経済に関する報道のレベルの低さは目に余る。おそらくマスコミ内部の人にとっても、それは精神衛生上良いことではないだろう。