「そりゃまあ不平や不満はあるでしょうけど、今この国で反乱を起こさなきゃならんような理由が例え一部であれ自衛隊の中にあると思いますか」

後藤喜一 「PATRABOR2 the Movie」より
今の時代の最大の問題は「心の底から困るような大きな問題がなくなった」ことにあるんじゃなかろうかと最近感じる。小松左京のSFを今になって読んでいると特にそう思う。過去SFで扱われてきた大きな問題は、確かに劇的な解決は出来なかったかもしれないが、誰もがそれなりに満足できる状態にまでなってしまっている。それならば、今という時代は「なんとなくユートピア」ということになるはずなのだが、世の中の人はそんなに幸せそうには見えない。
人間の特性を考えるに「善くなっている」という状態が幸せなのであって、「すでに善い」という状態はあまり幸せに感じられないという傾向があるのかもしれない。「学園祭前日」が楽しいのであって「学園祭」が楽しいというわけではないというように。
「現世こそが地獄」といった考え方もあったように思うが、こう考えてみるとこれからの世の中というのは「不快指数75のやや地獄が連日続きます」といったところなのかもしれない。
まあ、そうはいってもどうこうなるわけではないわけで、人間それなりに生きていくしかないようで。