小泉総理がペイオフ全面解禁の一部見直しを指示した。見直しの中心は「当座預金」である。個人的にこれはすごい好機なんじゃないかと思っている。何の好機かというと「信頼できない経済学者・コンサルタントの選別」の好機だ。
私は工学系の学部なので経済学に関してはまったくの素人なのだが、今回ばかりは間違いなく正しい政策である。なぜ正しい政策であると断言できるのか。これには今回ペイオフの対象外になると言われている当座預金のことを理解しておく必要がある。
当座預金とは企業がその取引の際に一時的に振り込む預金のことを言う。例えばあるシステムの構築に一億円かかったとしよう。当然、依頼した企業は金を支払うわけだが、普通直接支払うようなことはせずに約束の日時までに銀行の当座預金に振り込む。で、システムを構築した会社はその金を引き落とすわけである。が、しかし、この一億円がすべてシステム構築をした会社の利益になるわけでは当然ない。システム構築にはコンピュータを買った金など、その他もろもろの金が含まれる。だから、その金は次々と別の企業へと払い込まれることとなる。もちろん、ここでまた当座預金が使われる。
要するに当座預金とは企業が一時的な金のやり取りに利用する財布のようなものだ。ただし、この財布は各会社に入る金の総額が振り込まれるわけなので、実際の利益よりも多額の金が振り込まれる(十倍くらいは当たり前だろう)。
ちなみに、よく不渡りを出すという言葉を聞くかもしれないが、これは引き出しの日時までに当座預金に振り込まれないことを言う。これが二回くらい起こると倒産となる。だから、当座預金への振込みが遅れるというのは企業にとって死活問題なのだが、その振込みが遅れたことによって関係する企業も振り込みできず連鎖倒産を起こすことになり周りにとっても死活問題となる。まあ、ようするに「絶対にやるな」ということだ。
ここではじめの話に戻る。ペイオフとは、銀行がつぶれた時、ある一定額以上は保証しないというものである。当座預金ペイオフされた状況で銀行を潰してみよう。まず、銀行がつぶれる。すると、たまたまその日に当座預金に振込んでいた企業は金をきちんと振り込んだにも関わらずその金が失われる。当然、引き落とす側は引き落とせないので倒産する(しかも本来得られるはずの利益よりも多額の損失が出る)。当然、機材を提供するなど周りの会社も金をもらえなくて倒産する。そしてまた……。たまたま運悪くその日に取引日を設定したがゆえに、関係ない企業もまきこんでの連鎖倒産が起こる。
ごらんの通り酷いことになるわけだが、この話からもわかるとおり、そもそも当座預金というのはペイオフの対象にすべきようなものではない(そもそも、クルーグマンなどはペイオフ自体やめるべきだと主張していたりするだが(訂正:勘違いです。主張しているのは、リチャード・クーとか榊原英輔とか。クルーグマンは、ペイオフに関しては特に何もいってない)、私はペイオフ全体に対してどうこういう見識はないのでそこまで言うつもりはない)。
で、である。某ニュースステーションをはじめ各種マスコミは、今回の措置を批判的に報道している。「駄目な銀行の淘汰が出来ない。ペイオフの趣旨に反する」そうだ。どうも、駄目な銀行をつぶすためならば、数多くの企業が道連れになってもかまわないと思っているらしい。とはいっても、テレビ東京以外のニュースが経済の話題を扱う時はいつもいい加減なのでいまさら気にしていない。そう、問題は経済学者とか経済アナリストとかいった連中がどう出るかである。さすがに今回の措置に関しては、ほとんどの経済関係者が妥当であるとコメントしているらしい。まあ、さすがにここまで異論のなさそうなものでは当然ですが。
が、やっぱりいるのである、批判する奴が。ちなみに誰かというと明治大学政治経済学部教授「高木勝」先生そのひとであ〜る。いやはや、これで一生高木勝の意見は聞く必要がなくなった(笑)
いや、冗談抜きで今回のようなわかりやすいケースはなかなかないので、テレビに出てくる経済関係者の発言には要注目。