少しずつ読み進めていたクシシトフ・ボミアン著 松村剛訳「ヨーロッパとは何か 分裂と統合の1500年」をようやく読み終わる。前出のように歴史に関してはずぶの素人なので、この本が良い本なのかどうかは判じがたいが、細かい出来事ではなく各時代の流行を軸にヨーロッパ史を語っていて概要を知るにはなかなか良い本のように思える(逆に細かい出来事は名前しか出てこないので困る)。著者はロシア出身ということもあり、かなり客観的な視点から書かれているのだが、なぜかスコラ学派だけぼろくそにけなすのである。何か恨みでもあるのだろうかとも思うのだが、例によってスコラ学派の詳しい説明すらないので良くわからない。
ただ、この本一冊からでもいくつかの疑問が解けたような気がする。とりあえず、社会主義がなぜうまくいかなかったのか。この本を読む限り、社会主義は資本家と小作人に加え労働者という新たな階層が出来たが、これをどう考えればいいんだという問題意識から生まれたもののようだ。
ところが現在を考えれば世の中には社長や農家、総理大臣を含め労働者しかいないわけだから、社会主義の根底自体が崩れる。ようするに「世の中には資本家と労働者の二種類がいる」というモデルより、「すべての人が消費者であり労働者である」としたモデルの方が(時代の流れを考えると)適切になってしまったわけだ。ということでマルクスは悪くない。まる。

あとユダヤ人が嫌われていた理由とか。昔、キリスト教の敵だったのがずっと悪影響していたようだ。紀元前の事が二千年間も尾を引くなんてある意味スケールがでかいが、紀元前の民族の境界線がその後も境界線になることがよくあったなんて記述を読むと、民族や文化の継続性というのは非常に強いのかなんて思ったり。