2003/02/13の日記にてらしまさんからツッコミ。許可をもらったのでそのやり取りを公開します(一部、名前などを変更してます。なお、本日記中の先輩と文中の「とりい」氏は同一人物です)。で、別ページにしようかとも思ったのだけれど、悩んだ挙句絶望書店での小谷野敦とのやりとりを勝手に真似させていただくことにした。小谷野敦に感謝(ヲヒ)


てらしまです。日記を読んでいて思った。

しかし、現実問題として経済に関する人々の知見というのは実体経済に様々な形で影響することになることを考えると、いつかは物理学並みの信頼を勝ち得なければならないはずなのだ。とりい先輩との論争でもこれが物理学ならばどんなに楽だろうと考えたことがしばしば。
物理学者でもこういう考え方をしている人は多いのでなんともいえないのだが。君は物理学に対して、大きなファンタジーを持っていると思う。
まあ、一般に信頼されているのはたしかではあるけど。それは間違いなく誤解に基づくものなので、踊らされてはいけない。
むしろ、信頼されてしまっているがために「幽霊や超能力の存在を物理学で説明できるのか」なんてとんちんかんな反論が出てきてしまうのだし、わたしの印象としては経済学よりも物理学の方が状況は悪いと思う。
ちなみに、「幽霊」に関して。物理学というのは科学であり、科学というのは方程式に表すことのできない領域を調べることだと思う。
すでに方程式になってしまった部分は、この考え方でいえば、すでに科学ではない。知識。
だから経済学が科学だという君の意見には賛成なんだけど。
したがって、幽霊の存在を物理学が説明できるかどうかという質問の答えは「未来にならなきゃわからないが、いつか説明できると信じている」でしょ。あたりまえじゃんって感じ。
人生の道行きが見えない大衆はどこかで「世の中を動かす単純なモノ」を求めるので、そこで物理学がてきとーに祭り上げられてしまう。だから物理学に対する信頼というのはほぼ完全にファンタジーだと思うし、信じてはいけない。
とはいえ、私のこういう考え方はSFに特有のものかもしれない。小松左京の『教養』でも似たようなことをいっていた気がするし。


どもども。英-Ranです。

物理学者でもこういう考え方をしている人は多いのでなんともいえないのだが。君は物理学に対して、大きなファンタジーを持っていると思う。
まあ、一般に信頼されているのはたしかではあるけど。それは間違いなく誤解に基づくものなので、踊らされてはいけない。
むしろ、信頼されてしまっているがために「幽霊や超能力の存在を物理学で説明できるのか」なんてとんちんかんな反論が出てきてしまうのだし、わたしの印象としては経済学よりも物理学の方が状況は悪いと思う。

ちょっと誤読されている気がしないでもない。物理学への信頼は間違いなくファンタジーだけど、それは強力だし実際に効果を発揮している。しかも、議論においてはそれが重要だというのが私の主張。

#説明不足の感は否めませんが

次のような状況を考えてみます。

  1. Aさんは「〜と言う学者がフリーエネルギーは物理学的に可能であると主張

しているのでトンデモではない」と主張している

  1. Bさんは「物理学は不可能だと主張するが〜は超能力を持っているじゃない

か」と主張している

  1. Cさんは「この世は実はマトリックス空間なんです」と主張している。

1は物理学を正しいと思っているがトンデモ物理学を信じている事例。2、3は物理学を信じていない事例。1、2は物理学的に反証可能。3は物理学的に反証不可能。
1はフリーエネルギーが物理学的に不可能であることを示したり、ノーベル賞物理学者を連れ出してきて説明させれば、説得できるでしょう。
しかし、2の場合は最低限、物理学の考え方から話を始め、場合によっては数式、論理式などを用いて矛盾がないことを示さなければ、説得 or 論破できない。
3の場合は、そもそも物理学で可能なのは「論拠がない」ことを示すことだけで、「否定する」ことはできない。このようなことを言い出す場合、だいたい信じきってるので現実的に説得不可能な場合が多い。
本当は、世のすべての人が学問的に正しい知識を持つのが一番いいのだけれど、そもそもそんなことは無理なので「周りの人に迷惑をかけない or 本人が困らない」ようにしむけることが重要だろうと私は考えています。すなわち、例え完全に理解していなくとも正しい知識で洗脳すべきだと(洗脳されないような人は自分で調べて正しい結論に至れるはずだから、放っておけばいい)。
物理学の場合、信用があるのでほとんどの人々が(騙されたとしても)1に分類されます。だから、さほどコストをかけなくとも正しい知識に導くことが可能です。しかし経済学の場合、信用がないので2に分類されることになります。例え2時間スペシャルの番組を自由に使わせてもらったって説得するのは大変でしょう。


ちなみに、「幽霊」に関して。物理学というのは科学であり、科学というのは方程式に表すことのできない領域を調べることだと思う。
すでに方程式になってしまった部分は、この考え方でいえば、すでに科学ではない。知識。
だから経済学が科学だという君の意見には賛成なんだけど。
したがって、幽霊の存在を物理学が説明できるかどうかという質問の答えは「未来にならなきゃわからないが、いつか説明できると信じている」でしょ。あたりまえじゃんって感じ。

それは、私の科学の定義と違ってますねえ。私の定義は辞書にかかれてたものそのものでして「自然や社会など世界の特定領域に関する法則的認識を目指す合理的知識の体系または探究の営み」というものです。合理的知識の体系も含めるので知識の部分も科学の一部と捉えています。

#まあ、ここらへんは人によって定義が違うからしょうがないといえばしょうがない


人生の道行きが見えない大衆はどこかで「世の中を動かす単純なモノ」を求めるので、そこで物理学がてきとーに祭り上げられてしまう。だから物理学に対する信頼というのはほぼ完全にファンタジーだと思うし、信じてはいけない。

たとえファンタジーでも重要なものはいくらでもあると思う。例えば「イデオロギー」「幽霊」「宗教」なんかは、良かれ悪しかれ現実に影響を与える力を持っているわけだから、単純に無視するわけにはいかないでしょう。もちろん、物事を解決する際には科学を最優先させるべきだけれど。


てらしまです。


ちょっと誤読されている気がしないでもない。物理学への信頼は間違いなくファンタジーだけど、それは強力だし実際に効果を発揮している。しかも、議論においてはそれが重要だというのが私の主張。

たしかにそのとおりだと思う。そのつもりで読み返すならスジは通っているんじゃないか。この場合、説明不足なのは問題だと思うけど。
ただ、物理学への信頼が強力だ、というのには疑問。


物理学の場合、信用があるのでほとんどの人々が(騙されたとしても)1に分類されます。だから、さほどコストをかけなくとも正しい知識に導くことが可能です。しかし経済学の場合、信用がないので2に分類されることになります。例え2時間スペシャルの番組を自由に使わせてもらったって説得するのは大変でしょう。

これは相手がとりいだからじゃないの?
一応文系の人は政治なり歴史なりをやっていて、経済学に門外漢ではないと思っているはずだから。


ただ、経済学を使っての説得が難しいのはたしかかもしれない。
しかたないことなのだが、理系の技術者や理論をかじった人間よりも政治や経済をやっている人間の方が社会的地位は高い。だから社会を支配する論理は政治、経済の方に傾いているともいえると思う。
新聞の紙面を飾るのはそういう話題ばかりで、だからだれもが経済学を「無関係」とは思っていない。説得が難しいというのはそういうことでしょう。
これはみんなが誤っているからではなくて、議論が活発であることを表している。私も君の意見がすべて正しいとは思っていないし、「自分がすべて正しい」という前提で話をしてしまったら、それは議論ではなく説教か喧嘩。
まあ、「自分の方が本を読んだんだから信じろ」と思うのはわからないでもないが。
物理学が信用されているのはみんなが自分に無関係だと思っているからで、この状況はしかし、一気に崩れる可能性がある。最近そんな気がしている。
オタクと同じだと思う。理系の人間はオタクと思われがちだし。
アニメオタクに聞いたアニメの話は、普通の人は頭から信じてしまう。ふだんアニメが「無関係」な代物だから、知識を持っていないので信じてしまうしかない。
でも実は知識を持っていないんじゃなくて、知らないことにしておいた方が「社会的に正しい」(これもファンタジー)からそうしているわけで、現にガンダムのネタは、今ではそうとうマニアックなものでも一般に通用してしまう。たぶんみんな知っていたのに知らないふりをしていたわけでしょう。
物理学にまったく無関係な人間なんているはずもないし、ガンダムと同じアウトブレイクが起こる可能性はある。
特に日本でだと思うんだけど、専門的なことはすべて知らないふりをしているのが「社会的に正しい」。これは物理に限らない。でも経済はすでに社会的地位が高いから、みんなが興味を持っていて、だから議論に食いついてくる、のかも。
やっぱり、単にとりいが元文系の学生だったからだと思っていた方がいいかも
しれん。
あと、議論を傍目から眺めていて(日記からではほとんどわからんが)、とりいと君とでは扱っている歴史のスケールが違うと思う。君は技術屋らしくせいぜい数十年単位の話だが、とりいは歴史学が専攻で、しかも中国なので千年単位の話でしょ。
千年単位で成功した経済というのはないし、あったとしても今の経済学で語れるものではない。二人が経済を議題に話をしていることに問題があるわけで、これはもう双方が相手に合わせようとするしかないんだろう。議論というのはいつでもそうだが。
もっとも、ウェブページ的には、不毛でも議論が盛り上がっていた方がいいような気もする。

今後のやり取りも日記で公開する予定ですが、余りにも長く続く場合には、別ページに移動させるつもりですんで、そこんとこよろしく。
P.S. とりい先輩の話も多少出てきてるので、もし問題があるようでしたらご指摘ください。まだ、Googleがキャッシュを取りにくるまでは時間があります(-_-;