経済物理学について思ったこと

高安秀樹のサイトの文章とか読んで思ったのだけど、やはり経済学というのは物理屋さんがちょっと手を出したところでどうこうなる分野ではないのだなぁ。

たぶん、大学生の頃だったら高安先生マンセーとか言ってたかもしれないけれど、経済学をある程度知った後から考えると経済物理学の方向性では結局何も生まれない、余りにも狭い範囲でしか物事がいえないということが明白だと思えてしまう。

もちろん、この研究はこれで面白いし意味のある研究だとは思うのだけど、フリードマンの「科学的であることにあまりにもこだわりすぎると、問題の吟味される範囲は必然的に縮小するだろう」という言葉の通りで、この方法論で研究しても経済政策を立案するための有用な帰結が多く得られるようには思えない。

マクロ経済学は厳密さには欠けるかもしれないが、大恐慌、国際通貨危機ハイパーインフレ、失業といった人びとを苦しめる問題に、実際に役に立つ道具をたくさん提供してくれているし、インフレ目標策もそのひとつだ。翻って経済物理学でわかることは、せいぜい受給均衡点付近の揺らぎやオプション価格をよりよく推定することぐらいではないか。いたるところにベキ分布が見つかるのがわかったが、それによって何が提言できるというのだろうか。

経済物理学と聞くと一見新しそうなアプローチだけれど、その方法論・意気込みを見るとまるで計量経済学を見ているようである。彼らも統計学を駆使し経済学を科学的にするために乗り込んできた。たしかに現在の経済学において様々なところで役に立ったとはいえ、それによって過去の経済学が書き換えられたようには思えない。

結局、物理学が高度な学問で経済学は低レベルな学問などというのは勘違いも甚だしい話であり、単に物理学の対象が扱いやすい類のものだったというだけのことなのだろう。