経済学で考える日本のIT再生計画(その2)

では、今日は二番目の……と行きたいところなのだが、どうも昨日の問題に対する検討が不十分な気がしている。国内の平均賃金がその国の生産性で決まるのは明らかなのだが、では企業における給料の高さははたしてその企業の生産性で決まるのだろうか。たとえば、年々生産性が上がり続けている家電メーカーの社員ととても生産性が向上しているとは思えない新聞記者の年収を比較すると、概ね後者の方が高くなる。

もちろん、このこと自体は次のように説明できる。生産性の高い産業は生産性が高いが故に十分に供給が起こり価格も下がる。それに対し、生産性の低い産業は生産性が低いが故に十分に供給することができず、価格は下がらない。その結果、全体として見ると生産性の高い産業の重要性は下がっていき、生産性の低い産業の方が相対的に重要性が高まる。

では、ある企業の給料水準はどのように決まるのか……と言われるとこれが良くわからない。就職人気ランキングを見る限り、生産性の高い業種だから、あるいは生産性が低い業種だからと言ってそれが給与や人気に反映しているわけではないようである。

というわけで、本日はペンディングにして週末にでも労働経済学の本を立ち読みしに行ったうえで再度考えたいと思う。

ただ、これだけではあんまりなので、昨日のリクルートによる就職志望ランキングを使い各業種上位5社の平均就職志望順位によって業種の人気度を数値化してみた(ただし、困ったことに2005年以外にはソフトウェア・情報処理の業種別ランキングが掲載されていないのだが、このこと自体がIT業界の人気の無さを表していると言えよう。実際、2003年以前の上位100社のランキングにIT企業の名前はほとんど出てこない。むしろ、2005年度ランキングに業種として採用されたという事実を喜ぶべきであろう)。

2002年 2003年 2004年 2005年
1 マスコミ・広告代理店6.8位 旅行・運輸7.4位 旅行・運輸6.6位 旅行・運輸6.0位
2 旅行・運輸13.0位 マスコミ・広告代理店9.4位 マスコミ・広告代理店11.4位 マスコミ・広告代理店13.4位
3 メーカー(電子電気)22.0位 メーカー(その他)19.0位 メーカー(その他)21.0位 メーカー(自動車・輸送機器)23.6位
4 メーカー(その他)22.8位 金融・証券・保険29.8位 メーカー(電子電気)21.4位 メーカー(電子電気)24.6位
5 金融・証券・保険25.4位 メーカー(電子電気)30.2位 メーカー(自動車・輸送機器)22.2位 金融・証券・保険25.8位
6 メーカー(自動車・輸送機器)28.2位 メーカー(自動車・輸送機器)33.0位 金融・証券・保険23.8位 メーカー(その他)33.6位
7 商社37.0位 商社53.2位 商社46.6位 商社35.4位
8 商業(専門店他)76.2位 通信72.6位 通信54.0位 サービス(その他)36.4位
9 百貨店・ストア・コンビニ105.0位 商業(専門店他)91.6位 商業(専門店他)71.8位 (IT業界*150.2位
10 百貨店・ストア・コンビニ113.2位 百貨店・ストア・コンビニ104.2位 メーカー(医薬品・化粧品)64.6位
11 メーカー(建設・住宅関連)67位
12 通信69.0位
13 ソフトウェア・情報処理112.0位
14 商業(専門店他)123.8位
15 百貨店・ストア・コンビニ142.6位

*1:ソフトウェア・情報処理にSIに強いメーカー系企業を加えたもの。他の業種と企業が重なっていることに注意。