経済学で考える日本のIT再生計画(その4)

すっかり間があいてしまって、金曜日までにこの文章も書き上げねばならないのに本当に間に合うのだろうかという感じである。

というわけで、一番どうでもよさそうな「(2)世界に通用するソフトウエアが存在しないのはなぜか」に移る。

答えを簡潔に書いてしまえば「比較優位がないから」である。これは明らかである。だって、実際に世界に通用するソフトウェアが輸出されてないんですもの*1

比較優位がないとはどういうことか。日本において、他の財・サービスの生産性に対するソフトウェア開発の生産性水準が、アメリカのそれより低いということである。これはアメリカに比べ日本のソフトウェアの生産性が低くなくとも成り立つ議論であるということに注意しなくてはならない*2。実際、日本には鉄鋼や自動車、家電といった非常に生産性の高い産業が現に存在するわけだからソフトウェア産業などがしゃしゃり出てくる必要はない。

そもそも「日本も世界に通用するソフトウェアを作り出すべきだ」などという考えが間違っている。貿易に限らず取引というものは必ずお互いの得になるのである。自国で作るより海外で作る方が効率が良いのであれば、輸入する方がよい。お互いに得意分野でがんばればよいのである。衣類や作物は輸入して良くてソフトウェアは輸入すべきでないなどという理由はないのである。自尊心なり愛国心なりを満たしたいならMatzさんのようにオープンソースで役に立つものを作ればよい。そうすれば、日本人はもちろん世界中の人の生産性が高まる。日本のソフトウェア産業の将来を憂うよりは、この方がよほど健全ではないかと思うのだがいかがだろうか。

*1:私の知る限りrubyくらいか。もしかするとスパコン系のソフトウェアは輸出されているものもあるのかも

*2:実際問題としては英語の壁のおかげで、日本における世界を視野に入れたソフトウェアの生産性は絶対優位で考えても低い可能性はあると思うけど。学術論文やスピーチだって英語じゃなければ……と思ってる人は意外に多いはず。