政府や国家は家庭ではない

もし政府が月収40万円の家庭だったら
日本(ヒノモト)さんちの家計の事情

如何なものか。弾氏は経済学の書籍を読んでいるはずなのだが、なぜこんなものを書いてしまったのだろうか。こんなものを書いているから技術者は粘着な経済学者に馬鹿にされるのである(w。

政府や国家は家庭ではない。たとえ、それがたとえであってもそれは適切なたとえにはならないであろう。なぜか。

いくつかの質問を考えてみれば、それは明らかなことである。

Q. 政府や国家の主権は誰ですか
A. 日本国民です。
Q. 税金は誰が納めますか
A. ほとんど日本国民です。
Q. 政府は誰から借金してますか
A. 40%が政府です。日本銀行が15%、残りのほとんども日本国内で保有されています*1
Q. 日本銀行で出た利益はどこに行きますか
A. 上限はありますが出資者に配当を行うことができます。通貨発行益は国庫に入ります。
Q. ちなみに日本銀行の出資者は誰ですか
A. 55%が日本政府です。ちなみに出資者には議決権がありません。
Q. そもそも日本円の価値を決めているのは誰ですか
A. 日本銀行です。

さて、これらのQ&Aをふまえると、政府や国家はほぼ、国民からお金を徴収し、国民にお金を渡しているだけであることに気づくはずである。借金の利子は債権者に行くが、債権者もまた日本人であるから、実際には国内で再配分が行われているにすぎない。

国家は家庭とは異なる概念であり、同じように見なすことはできない。そして同じように企業のように国家と国家は競争を行っているわけでもない(経済対立は誰が起こすのか―国際経済学の正しい使い方 (ちくま新書))。国家は国家であり、それ以外のものに例えるならば単にミスリードを招くだけなのである。

[追記]しまった、弾氏の方の文章をよく読まずに書いてしまった。きちんと「家の外からの借金は4%弱しかないのです。というわけで、日本さんち全体として見ると、家計はむしろ健全に見えます」と書いてあるではないか。失礼しますた。

とはいえ、その後の記述はどうか。国が借金をして行うのは公共事業であるのだから、労働力を有効活用したと考えるべきではないだろうか(「景気と経済政策 (岩波新書)」参照)。現在の日本は別に不平等になっているわけではないし、国の借金は発散しさえしなければよい。なかなかインフレにならない現状を考えると日本国民は国の借金を問題視していないと考えるべきなのではないだろうか。

*1:2003年度の数値しか見つけれれなかったので、情報はちょいと古い。今だと郵便局が政府扱いにならないので文字通りに受け取るとちょっと不適当だが、事実上という意味では間違いではないので、このままにしておく。