中田秀夫監督作品「怪談」を見る

高橋洋のいない中田秀夫作品なんて期待できないだろうと思いながらも見に行ったのだが、あんがい中田秀夫という監督は、演出家としては一流であって内容はともかく映画としては立派なものであった。

「怪談」と銘打ってはいるが、原作に書いてあるように真景累ヶ淵の(一部をピックアップして)映画化したものである。怪談好きのくせにいままで累ヶ淵は話を知らないままで過ごしてきたので物語自体も楽しみにしていたのだが、四谷怪談や番町皿屋敷に比べてメジャーになれない理由がわかった気がする。呪いに理屈が通らないので感情移入がまったくできないのだ。人はバタバタ死んでいくので、落語では仔細はさらっと流し幽霊の演出を注力することも可能だが、映画ではそうもいくまい。

これだけの演出をきっちりこなせるのに話がついてこないというのは非常にもったいない(ので、さっさと高橋洋と仲直りしてくれ)、と昔からの中田秀夫ファンとしては思うのであった。