SI業界の未来

一応、業界人らしく自分の業界がどうなるのか占ってみる(と、言いつつ生きてること自体にあまり執着がなくなってきているので、どうでも良い気もしなくはないが)。思いつくままに書くので、おそらくグダグダ。

まず開発自体のコストは今後著しく下落するだろう。これは予測ではなくすでに起こっている話だ。プログラミングを神聖化したい人々には悲しい知らせだが、そもそも神聖化するほどのプログラムはごく少数であり、ほとんどのプログラムはIF文とAPI呼び出しの羅列で作られていることを考えれば、その悲しみはお門違いだということがわかるだろう。

オープンソース運動は、世の生産性を高めた一方で、いわゆるパッケージ製品的なソフトウェアビジネスの市場を破壊した。ただし、これは貿易によって全体は利益を享受するが低賃金労働者に関してはさらに低賃金ってしまうという現象と同じように、安易なパッケージがオープンソースによって駆逐されるだけであり、専門性が高くマニュアルやサポートなしでは導入できないソフトウェアはそこまでの影響を受けないだろう。

オープンソースの隆盛はSI産業を死滅させるのではないかと予想する人がいるが、実際に起こることは逆だと思われる。ソフトウェア自体の生産性が上がり価格が下がるならば、生産性が上がらないサービス部分(コンサル、導入、サポート、運用)に振り向けられる金額はむしろ増えることになる。もちろん、余ったお金がSI産業以外に振り向けられる可能性も考慮しなければならないが、今や企業が自分の会社の価値を上げるために投資する場合には必ず何らかの形でコンピュータ・システムが絡んでくることを考えると市場が広がることはあっても縮小することは考えにくい。

海外でのオフショア開発は開発生産性が極めて高くなり前述のようにサービス的な要素が高くなるにつれ日本で開発した方が融通が利くので減少する可能性がある。ただし、(神聖化したいようなものを含む)高度な技術を要するソフトウェアに関してはむしろオフショアが増えていくだろう。

すでにコンサルタントとシステム屋の境界は薄くなりつつあるが、今後もその方向は(残念ながら)変わらないだろう。コンサルとシステム屋が組んだ案件がことごとく失敗したという教訓からわかることは、コンサルは未来創造の手助けをする役割に特化するが故に現実を無視する傾向にあり、システム屋は逆に今ある現実に捕らわれすぎてしまうという傾向があるということだ。これを解決する方法は創造力と現実把握能力の両方を具備するしかない。

ただ、これを担うのがSI業界なのか各企業のCIOなのかによって状況は大きく違う。本来であればその責務はCIOが担うべきだし、それができた企業は成功する可能性が高いわけだが、実際にはなかなか難しく結局はSI業界にその責務が押し付けられることになるだろう(本当にそれでいいのか?)。

今はデータセンターが隆盛を極めているが、おそらく今後は場所だけでなくハードウェアごと貸し出す場合が増えるのではなかろうか。すでに小規模企業向けのレンタルサーバが結構進出してきるが、仮想化技術の進歩とハードウェア能力向上が限界に近づいていることを考えると、大規模な会社も順次そうなっていくだろう。

コールセンター業務の海外へのオフショアは、言語や文化の壁がコールセンター業務にとっては大きな壁になる可能性があるため進まないだろう。ただ、IPフォンなど設備・金額の面での地理的条件が緩和されることによって、国内地方都市にコールセンターを配置することは多くなるのではないだろうか。