市場の失敗 政府の失敗

政府は市場が失敗する場合のみ介入すべきである、という経済学の教えには疑問の余地がないものの、何を持って市場の失敗とすべきかはなかなか難しい。

先日、飲み会の席で某人と刑務所の民営化の話になったのだが、私にしては珍しく民営化すべきでないという立場を取った。

私が刑務所を民営化すべきでないとする根拠は、次の通りである。

  1. 刑務所は刑を犯したものならば誰でも受け入れなければならず、また公平性を考えれば同じ刑を受けたものは同等のサービスを受ける必要があるため刑務所間の競争は望ましくないかもしれない。
  2. 受刑者がお金を払うわけではない以上、価格による刑務所市場は発生し得ない。お金を払うのは常に政府であり、民営化したところで政府機関と何ら変わりない。
  3. 刑務所は人権を制限する場所である以上、民間人に人権侵害を許す特権を与えることが許されるのかという道義的問題もある。

また、民営化という話になった場合、現実的には部分開放となる可能性が高いが、そうすると優良な受刑者が民間刑務所に集まる一方、老人や障害者のような社会的弱者の受刑者だけが国営刑務所に集まり刑務所運営が成り立たなくことも考えられる。

そもそも、日本の刑務所は安くて効率の良い経営をすでに行っているのだから民営化なんてお題目は唱えなくてもよいのではないか、と思わないでもないが……