原油価格高騰はバーナンキのせいか

しかし最近になって私は再び自分の考えを変えた。食料やエネルギーの価格が供給ショックに大きく影響されるということは事実である。しかし粘着価格モデルでは、緩和的な金融政策の効果がいち早く現れるのは、食料とエネルギーの価格である。仮に10種類の財から成り立つ経済があると仮定する。そのうち9種類の財はメニューコストが大きい。残り1種類の財だけはメニューコストがない。もしこの経済に空中のヘリコプターから紙幣をばらまいたら、メニューコストのない財の価格が短期的に急騰することとなろう。消費者物価指数の対象品目の中からメニューコストのない食料品(とエネルギー?)を除くということは、いずれ明らかになってくるインフレ圧力を覆い隠すことになる。

(ブライアン・キャプラン・ジョージメイソン大准教授)

http://d.hatena.ne.jp/yumyum2/20080709/p3

専門家じゃないので嘘を書いているかもしれないと断りつつ、なんか変だと思うところを指摘してみるテスト。

第一に「いづれ明らかになってくるインフレ圧力を覆い隠すことになる」としてもその前に「メニューコストのない財の価格が短期的に急騰することとなろう」と書いてあるわけだから、理論どおりであれば今起こっているのは通常のインフレがおこるはずなのだが実際に起こっているのはコストプッシュインフレだ。今の状況になる前は通常のインフレが高率で推移していたなんていう話は寡聞にして聞かない。

第二に、現在のコストプッシュインフレは世界的な現象でありアメリカの金融緩和を原因にする説では説明がつかない。アメリカが過度に金融緩和したのであれば、他国にとってはデフレ圧力として働くわけで日本やヨーロッパでは食料やエネルギー価格の下落が見られるはずである。

というわけで、この准教授の説明は理論としてはありえるが、今回の事態の説明としては適当ではないと思われるがいかがなもんだろうか。

て、ゆうかですよ。利上げなど金融収縮によって特定の財の価格を下げるということは、利上げ => 貸し出し金利の上昇や求められる信用の増加 => 経済の収縮 => 需要の低下 => 財の価格の低下という理屈を使っているわけだから、特定の財の価格を下げるためだけに広範囲のコストを覚悟しなきゃらなんわけですよ。この准教授の説明する理屈が正しかったとしても、特定の財の価格と全体の経済とどっちが重要かという損得勘定が抜け落ちてる時点で不適切といわざるを得ないよね。