経済学は科学たるべきか、工学たるべきか

以前シノドスセミナーに、小島寛之先生をお招きしたときにも、似た話題になりました。経済学は「科学」たるべきか、「医学」や「工学」たるべきか。そして今の経済学は、その両者のいずれか足りえているのか。小島さんはゆくゆくは「科学」を目指すべきだと述べ、飯田さんも長期的にはそこを目指しつつ、まずは工学的に、実践をつみながら発展して欲しいと応答していた。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100302/213117/?P=2

最近思ったのだが、経済学は上記の意味では科学足りえないのではないか。近代経済学は、数学的には制約条件付き最適化問題の解法にすぎない、という言葉が示すように、資源に制約がある状況下で如何にしてそれを有効活用するか、ということを主題としているのであって、経済とは何であるかを明らかにすることは主題とされていない。このことは、富の源泉を明らかにすることを目指したマルクス経済学や理論と現実の差を分析する行動経済学に対する主流派経済学者の冷たい視線と無関係ではない。

今現在、近代経済学と呼ばれているものは、そもそも工学的目的によって成立している以上、工学にならなければならないのであって、科学になっては目的が果たせないということになる。近代経済学マルクス経済学の科学的な根本原理の追求を捨てている以上、それは歴史的に自明であるように思える。

そこら辺の感覚が(もしかすると、経済学など応用数学に過ぎないとさえ考えているかもしれない)小島先生には理解できないのかもしれない。