最低賃金を撤廃すべきでない理由

このブログでも以前言及したことがありますが、最低賃金規制は貧困対策としてはまるで役に立ちません。まず、働いている人にしか効果をもたらしませんし、最低賃金を高くしすぎれば失業増にも繋がります(ただし、現実の最低賃金水準ではそれほど大きな影響は見られないようです。その効果は確認できないか、わずかに若年者雇用が減少する程度とのこと。しかしながら失業増に繋がらないから問題ないとも言えません。実際には、サービス残業の増加といった現場の努力や、能力の低い人員と能力の高い人員を入れ替えるなどの調整が発生している可能性も否定できません)。

では、最低賃金規制は無用の長物なのでしょうか。そうではありません。

最低賃金には雇用主側による買手独占に対する規制としての役割があります。最低賃金を撤廃したところで、通常の企業は今と変わらない賃金を課すでしょう。事実、最低賃金の有無に関わらず、大抵の会社は最低賃金以上の賃金を払っているわけですから。

しかし、世の中には貧乏人の弱みにつけ込み、通常であれば労働を拒否するレベルの賃金を課す雇用主は必ず出てきます。最低賃金規制には、そのような雇用主を取り締まるという役割が残されているのです。理屈上問題だから、というだけで即時撤廃を求めるというのでは少々短慮すぎると言えるでしょう。