消費税の逆進性について

unrepresentative agent の税の逆進性についての記事を受けて思っていたことをメモ(ただし、それほど興味はないので、強く反論したいわけではない)。

  • 生涯消費に対して一定割合を課税するすることが「公平」であるというのは、他の条件が一定であるならば、という前提がある。人は生まれながらに平等ではないし、人の能力や生涯所得は生まれに大きく左右される。そのため、生涯消費に対して一定割合を課税するすることは現実には「公平」ではない。どちらかと言えばインセンティブを歪めにくいという意味で「効率的」と呼ぶに留めるべきだろう。書かれているように社会保障でも構わないが、何らかの是正措置は組み込む必要がある。
  • 累進課税のような税を歪めることでの再配分よりも、社会保障の方が優れているとは必ずしも言えない。なぜならば、大部分の社会保障は、後から給付されるためである。例えば年間所得に対して給付を行なうような制度を実施すると、先に餓死して後から給付が行われることにもなりかねない。これに対応するためには、ベーシック・インカムのように先に給付を行なう制度を導入する必要がある。そのような制度の存在なしに累進課税を減らすことはただの愚策である。とはいえ、ベーシック・インカムのような広く薄く給付する仕組みでは、金額面で差を調整するのが難しく、消費税と給付だけで現在の累進制度を模倣するのは困難ではないかと思う。
  • 所得より消費に課税する方がよい、という考えは「所得は労働に課税することで労働という良い行動を減らす方向に作用すると同時に、消費という自身の快楽に対して課税する」のだから理に叶っているという発想が背景にある。しかしながら、実際には人は「より稼ぐことで良い生活をしたい」という欲望のため、労働に課税をしても労働供給はほとんど変わらないという話もあるようだ。そのため、所得より消費に課税する方が良いとは必ずしも言えない。また、消費税が本当に人々のインセンティブを歪めていないのかも、実験し確かめる必要があるだろう。
  • 所得税をゼロにし、消費税のみで税を徴収する場合、日本で労働して賃金を稼ぎ、消費税が存在しない外国で消費することで簡単に脱税が可能となる。税は日本での生活に対して課されるものであるので、税の徴収は滞在している期間に日本国に滞在することによって得られた収益に対して課税がなされるのが望ましい。期間の対応を考えれば出口(=消費税)ではなく入口(=所得税)で徴収することが望ましいとも言える。ただし、家計全体で見れば、GDPに占める消費の割合は安定的であるので、全体としてはそれほど問題ではないかもしれない。
  • 消費税が景気に左右されないということは、ビルトイン・スタビライザーが有効に機能しなくなることの裏返しでもある。ただし、私は減税による財政政策の効果には否定的なので、これがそれほど重要な問題とは思わない。
  • そういえば、人は一時的な幸・不幸に対しては、しばらくすると元の状態に戻ってしまう、という話もある。そう考えると、毎日消費税を取られるという不幸が細かくやって来るより、一年に一度一括で支払えるような仕組みの方がより良いのかもしれない。

などなど踏まえ、私は累進包括消費税+ベーシックインカム派だったりするんだけどね。