年金ってなんだったのか会議

脱=「年金依存」社会 (別冊環 (9))」がやっと手に入ったので、年金について考えながら読んでいる*1。以前、某サークルの掲示板で年金について議論したこともあり、その時もいろいろ調べたりしたのだが、まだ自分の中での結論は出ていないのが実状である。

年金についてはいろいろ論点があると思うので、整理しながら私の意見を書いていくと次のようになる。

公的年金は必要か否か(市場に任せても良いのではないか)

必要である。理由を三点挙げる。

一点目、年金を提供している保険会社はいつ倒産するかわからない。通常の保険と違い、年金は支払い初めてから実際に提供を受けるまでの期間が長いため契約者は莫大なリスクを負うことになる。絶対安全な年金を提供できるのは政府だけである。市場では提供できないサービスを政府ならば提供できる。

二点目、現在の平均寿命を考えれば、ほとんどの国民は退職後必ず15〜20年の間、賃金を貰えない時間が存在する。金持ちだろうが貧乏人だろうが、誰もがその期間暮らすだけ貯蓄する必要がある。すなわち、年金は国民全体が必ず必要とするサービスである。

三点目、政府の役割のひとつに公共の福祉の実現がある。私は「老後も豊かに暮らせる社会」は公共の福祉たると考える。この目標は、国民皆年金でなければ実現できない。老後への安心感は消費の促進や労働市場の流動化にも繋がるだろう。

公的年金は賦課方式か積立方式か

いまだ、どちらが良いか明確な意見を表明している論に出会っていないのだが、経済学者の間では賦課方式に好意的な見解が多いように見受けられる。

しかしながら、私は積立方式の方が良いのではないかと今のところ思っている(納得のいく反論があれば改宗予定)。主な理由は、賦課方式の不透明さにある。積立方式が「自分が将来利用するお金を積み立てる」という意味で分りやすいのに対し、賦課方式は払う時は「老人達に払い」貰う時は「若者から貰う」と思えてしまうため支払うインセンティブが撹乱されてしまうのではないだろうか。

実際、賦課方式の場合、年金制度開始初期の加入者は多くのリターンが受け取れるし、年代構成の増減が不公平感に繋がっている。歴史的に年代構成は一定しないことは明らかなのだから、賦課方式にはそもそもデメリットがあるのではないか。

公的年金は税金化すべきか否か

税金化すべきである。前述に書いた年金の公共の福祉的側面の実現には、国民皆年金が必須であり未加入者が出るようでは意味がない。国民年金未加入では罰則を設けにくいが、税金ならば脱税ということになり強制力がある。

また、社会保険事務所国税という二つの機関に業務が分散することもなくなり効率化が図れる。

年金は「保険」たるべきか「所得再配分」たるべきか

私は年金は「保険」たるべきだと考える。もちろん、所得が低すぎて年金が払えない人のために支払い免除を認めるのは構わないが、基本的には「払った分+α(インフレヘッジ+金利)」であるべきだ。理由としては、年金はその仕組み上そもそも「保険」的であり所得再配分機能を加えると制度が複雑化してしまう。制度が単純ならば、説明も容易く、国民のコンセンサスも取り付けやすい。所得再配分も重要だが、それ用の方法を使用すべきで年金のついでに行うべきではない。


私の見解としてはこんなところだが、年金に頭悩ます前にデフレを払拭し景気を回復させる方が先なのは言うまでもない。きちんと成長さえしていれば、年金問題の半分は片付くのだから。

*1:まだ、読み終わってないので感想は後日