経済成長理論入門:経済学を納得させる優れた入門書

日本人の経済学への不信感には根強いものがある。その裏には歴史的なもの、制度的なもの様々な要因があるのだろうが、個々人に限れば「経済に関して見聞きした知識から納得感が得られない」ということこそが不信感の元になっていることは疑いようがない。

たとえそれがノーベル賞経済学者などの高名な学者の発言であっても胃の腑に落ちなければ、なかなか肯定しがたいものだ。「クルーグマン教授の経済入門」といった経済入門書を読むのもよいが、理系・工学系にはむしろこの「経済成長理論入門」をおすすめしたい。

納得のプロセスにはいろいろあろうが、やはり科学的方法論、すなわち事実の存在 => 理論の構築 => 検証というプロセスが一番わかりやすいように思う。同書はまさにこのプロセスを忠実に再現しながら経済成長という話題について説明してくれる。まず、第一章でデータから確認される事実が列挙される。そして二章以降、仮定に基づくモデルの提示、モデルとデータの比較による有効性の確認、そのモデルでは説明できない事柄の提示となり、次章のモデルへと展開する流れが継続する。素直な論理展開で説明されるので、自然と理解も進んでくる。

経済学入門と言えば、効用理論を基礎とする需要・供給の法則から始まるものと相場は決まっているが、人間の行動を抽象化した効用関数を使い同じく抽象的な市場で経済を説明されてもなかなか納得しがたいところがある。むしろ経済成長という、よりマクロな話題の方が経済学への納得感をもたらすという役割には向くのではないだろうか。

内容的には数式も多々ありお気楽入門とはいかないが、数式の展開やDSGEなど本当に難しい内容は省略されており数学に拒否感がない人であればすらすら読める内容だと思うので安心して購入されたし。

経済成長理論入門―新古典派から内生的成長理論へ

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